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    社会

    警戒せよ! 秋田の「人食いグマ」は3頭生き残った

    NPO法人「日本ツキノワグマ研究所」理事長 米田一彦
     秋田県鹿角市の山林で、タケノコ採りの男女4人が相次いでツキノワグマに襲われ、死亡した衝撃的な事件から間もなく1年になる。現場近くで射殺された雌グマではなく、現場近くで目撃された雄グマ「スーパーK」こそが4人殺害の“主犯”だと、NPO法人「日本ツキノワグマ研究所」の米田一彦理事長(69)は推測していた。スーパーKは昨秋、捕獲・駆除(殺処分)されたが、人食いグマは3頭生き残り、今年も厳重な警戒が必要だと米田理事長は注意を呼びかける。タケノコ採りシーズンを目前に控え、現地で関係者の聞き取り調査を続けてきた米田理事長に緊急報告してもらった。

    “主犯”の雄グマ「スーパーK」は駆除されたが…

    • “主犯”とみられる雄グマ「スーパーK」。事件から約2か月後、第1現場近くで米田さんが追跡、撮影した。わずか20メートル先に立っていても、平然と30分間も大豆の若葉を食べ続けたという(2016年8月6日撮影)=日本ツキノワグマ研究所提供
      “主犯”とみられる雄グマ「スーパーK」。事件から約2か月後、第1現場近くで米田さんが追跡、撮影した。わずか20メートル先に立っていても、平然と30分間も大豆の若葉を食べ続けたという(2016年8月6日撮影)=日本ツキノワグマ研究所提供

     昨年の5~6月にかけ、秋田県鹿角市十和田大湯の熊取平(くまとりたい)田代平(たしろたい)で、タケノコ採りの男女が次々にツキノワグマに襲われて4人が死亡し、4人が重軽傷を負った。十和利山(とわりやま)(990メートル)の南麓に広がる酪農地帯で起きたことから、戦後最悪のこの獣害事故を私は「十和利山クマ襲撃事件」と呼んでいる。

     昨年末まで、関係者の聞き取り調査を行った結果、以前に公表したものとは少し異なる状況が浮かび上がった。結論を先に述べると、事件の“主犯”とみられる雄グマ「スーパーK」は昨年9月に捕獲され、駆除(殺処分)されたが、遺体を食べた可能性がある「人食いグマ」が3頭生き残ったと推測される。このうち、確実に食害(人間を食べること)を行っていると考えられるのは、額の左側に古傷のある若い雄グマと、大きな赤毛の雌グマだ。現地では今年も人食いグマが出没する恐れは十分にあり、厳重な警戒が必要だ。

     この結論に至ったのは、次のような理由からだ。

    • 昨年5~6月にかけて起きた「十和利山クマ襲撃事件」の現場地図
      昨年5~6月にかけて起きた「十和利山クマ襲撃事件」の現場地図

     昨年の事故は、タケノコ採りシーズン中に発生した。5月21、22、30日に60~70歳代の男性が相次いで遺体で発見され、6月10日には70歳代の女性が遺体で見つかった。いずれも遺体にはクマに襲われ、食べられた痕があった。女性の遺体が発見された現場から約20メートルの場所にいたクマを地元の猟友会員が射殺。体長1メートル30センチ、体重70キロ、推定年齢6~7歳の雌グマで、胃の中から人体の一部が見つかったことから、4人を殺害したのはこのクマだという見方もあった。

     しかし、クマの社会では小さな雌よりも大きな雄が優位にあり、私は、4人目の犠牲者が出た現場近くを移動する体長1メートル50センチ、推定体重100キロの大型グマが目撃されていたため、このクマこそが“主犯”ではないかと推定。鹿角市の頭文字をとって「スーパーK」と名づけ、行方を追っていた。

     鹿角市の八幡平地区と隣接する旧田沢湖町玉川地域では、以前から、タケノコ採り中にクマに襲われる事故が続出。今回の事故以前にも死亡事故が発生しており、いつか重大な連続殺害事故が起きるのではないかと心配していた。それが不幸にも的中し、昨年、十和利山クマ襲撃事件となってしまった。

     この事件では、関係者への聞き取り調査が困難を極めた。事故直後から被害者宅にタケノコ採りで入山したことを非難する電話がかかり、ネット空間では「クマの生息地に踏み込んで殺されても、自己責任」とする論調さえ出ていた。

     2人目の男性が犠牲になった第2現場(5月22日)で、襲ったクマを目撃している犠牲者の妻と、5月26日に田代平で約20分間ナタを振ってクマと闘った男性は口をつぐみ、事件の全体像を把握するのを困難にした。クマと闘った男性の状況については、私設捜索隊が目撃しており、事態は把握できた。第2現場の状況は、犠牲者の関係者から話を聞き、おぼろげながら当時の様子がようやく分かってきた。

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    2017年05月11日 16時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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