文字サイズ
    社会

    NHKと民放、ネット同時配信めぐりバトル

    読売新聞メディア局編集部 中村宏之

    課題山積のネット同時配信

    • (東京・渋谷のNHK放送センター)
      (東京・渋谷のNHK放送センター)

     民放の反発を受けて、総務省による放送法改正案の通常国会提出は見送られたが、これで問題が沈静化したわけではない。議論の手続きやプロセスに民放側が容認できない点が多くあるほか、解決すべき問題が山積しているからだ。

     例えば、ネット同時配信の場合、電波を使う放送とは異なり、ネットワークに負荷がかかるため、アクセスが集中しすぎると輻輳(ふくそう)(通信が成立しにくくなる、いわゆるパンク状態)が起こりやすくなる。コンテンツ(情報内容)をネットで使うための新たな著作権処理も必要となる。このような物理的な課題や権利処理の交通整理を置き去りにしたまま、法改正を急ごうとするのはそもそも無理な話である。

     だが、このネット同時配信問題を考える際に最も大事な点は、やはり民放キー局幹部が指摘したとおり「コストとニーズ」を十分に見極めることだろう。

     これは、コマーシャルを中心とした広告収入で経営を賄っている民放は無論のこと、NHKにも当然あてはまる。なぜなら、NHKの経営は国民から徴収する受信料とNHK予算という国民負担で成り立っているからだ。ニーズが見込めないものに過大なコストをかけることは、結果として受信料や税金の無駄遣いにつながる。民放以上にNHKは「コストとニーズ」にこだわってしかるべきである。

     実はNHKは、昨年11月末から3週間かけてネット同時配信と見逃し配信の実証実験を行っている。実験結果はこの3月に公表されたが、同時配信サービスの利用率はわずか6%に過ぎず、見逃し配信(8.5%)を下回った。視聴傾向も、同時配信はニュースやスポーツが上位を占め、見逃し配信はドラマやドキュメンタリー番組が上位を占めたという。民放キー局幹部が「ドラマやバラエティーはライブ配信しても視聴されにくく、24時間ネット同時配信するニーズは乏しい」と指摘したとおりの実験結果だった。これでは、どんなに好意的に解釈しても、同時配信に底堅いニーズがあるとは言えないだろう。

    2017年05月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP