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    経済

    2050年、日本人の仕事はAIと中国に奪われるのか

    エコノミスト誌編集局長 ダニエル・フランクリン
     英誌エコノミストは、科学技術の動向や経済社会に与える影響について近未来の世界を予測した書籍「2050年の技術」(日本語版、文藝春秋刊)を発刊した。専門記者やコラムニスト、社外の研究者が分担し、科学の各分野について2050年の姿を徹底予測した。本書の企画・編集にあたった同誌のダニエル・フランクリン編集局長に発刊の狙いを聞いた。(聞き手 メディア局編集部次長 中村宏之)

    科学技術の発展が格差を広げる?

     --エコノミストでは2012年に「2050年の世界(英題:メガチェンジ)」と題した書籍を出版しました。今回は科学技術に絞ったわけですが、あえて30年後の科学技術を予想する意味は何でしょうか。

     以前の本でも科学技術を取り上げましたが、今回テクノロジーに絞った理由は、この分野は深く掘り下げて分析する価値があると判断したからです。それには二つの理由があります。

     まず1点目は、世界を変えている物事の重要なものがテクノロジーだということです。ある業界の予測をしようとしても、結局はテクノロジーの話になります。すべての業界、鉄鋼業界でも自動車業界でもメディア業界でも、最終的に何が変わっているかを考えるとテクノロジーによって変わっている。それも非常に速い速度で変わっていることに気付きました。

     二つめの理由は、今は想像もしていないことが2050年には出てきているはずだということです。2050年がこうなるという予測を最初からする訳ではなく、今、技術が変化しているその推進力は何かという要素をまず見極めることで、長期的に向かう方向性を予測しようと思ったからです。本書に物理学と生物学という基礎科学を考察した章がありますが、そこに数十年にわたってどのようなタイプの変化があり得るかを書いています。

     さらにもう一つ重要なのは、あえて2050年という長期的視野を持つことで、1年や5年の変化では目に入ってこないような、根底にある変化のトレンドを感じ取ることが出来ると思っています。長期的な視野は固定されているわけではありません。新しい情報が入ってくる都度アップデートしていく必要があります。

     --本の中で複数の筆者が、今の科学技術の発展は期待されているほどの経済効果を生み出さず、むしろ雇用を奪い、格差を広げているとの認識が世界に広がっていると指摘しています。これは一時的な現象で、時間がたてば解決する問題だという人もいますが、どう考えますか?

     私は楽観的な立場を取っています。本の全体的な印象は、新しいテクノロジーが素晴らしく、わくわくする感じになるというものでしょうが、注意すべきなのは、それがもたらす、今は気付いていない問題があるということです。特に問題なのは、テクノロジーはより格差を深めるものなのか、それとも最終的にはそれを克服して平等な社会を作っていくものなのか、という点です。私は両方の可能性があると思います。最も自信を持って言えるのは、テクノロジーの進歩によって生産性が向上し、それは数字で表すことが出来る規模になるということです。本書の分析にあるように、生産性の向上の効果が実際に出てくるまでにはかなり時間がかかります。19世紀後半から20世紀前半に起きた現象と似たパターンになるでしょう。我々はまだデジタル革命の初期の段階にいるにすぎません。

    2017年05月31日 12時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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