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    科学

    30年目の 「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(中)

    読売新聞調査研究本部主任研究員 佐藤良明
     読売新聞社が主催する「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」は今年30年目を迎えた。読売新聞調査研究本部の佐藤良明主任研究員が、フォーラムの軌跡などをまとめた「読売クオータリー」2017春号の論考を紹介する2回目は、21世紀に入ってからの「日本人受賞ラッシュ」の背景を探り、1970~90年代の地道な基礎研究が花開いて栄誉につながった歩みを分析する。(文中の肩書は当時のまま)


    日本人の受賞ラッシュ

     近年の日本人受賞者の増加はめざましい。2016年10月3日、スウェーデンのカロリンスカ研究所は同年のノーベル生理学・医学賞に、大隅良典・東京工業大学栄誉教授を決定した。これで日本人のノーベル賞受賞は3年連続となった。

     毎年10月の第1月曜日から始まる「ノーベル賞発表ウィーク」は、国民が「今年も日本人が受賞するのではないか」と朗報を心待ちにする恒例行事になりつつある。

     1949年に日本人で初めて湯川秀樹博士が物理学賞を受賞して以来、25人の日本人(うち米国籍2人)が栄誉に輝いている。自然科学3賞に絞ってみると、21世紀に入って以降の16人の受賞というのは米国の59人に次いで世界2位である。日本の科学はまぎれもなく世界トップクラスにあると言えよう。そして、ノーベル財団のカールヘンリク・ヘルディン現理事長がかつて読売新聞の取材にこたえ、「日本はノーベル賞に世界で最も関心を寄せてくれる国の一つ」と語っていたように、日本はノーベル賞受賞者が大いなる尊敬を集める国でもある。

    空白の時代から常連国へ

     フォーラムがスタートした30年前の日本人の受賞状況を振りかえると、1987年、利根川博士の受賞は、日本人としては福井博士以来6年ぶりの朗報だった。

     利根川博士から大江氏の受賞まで7年、大江氏から、その次の白川博士まで6年の歳月が流れている。3年連続受賞の現在からは想像がつかないが、当時、日本人が受賞するのは6~7年に1人というペースであり、空白期間がかなり長く、日本人にとってノーベル賞受賞者ははるか雲の上の存在だったのではないだろうか。

    • 野依良治氏
      野依良治氏

     それが白川博士の受賞以降、ノーベル賞は日本人にとって少し身近なものになる。というのも、翌01年に野依良治・名古屋大学教授が化学賞を受賞し、自然科学系で初めて「日本人の2年連続受賞」が実現したからだ。さらに、02年には小柴昌俊・東京大学名誉教授が物理学賞、島津製作所の田中耕一氏が化学賞を受賞。一つの年で初めて複数の日本人受賞者が出た。日本人の3年連続受賞も初めてだった。

     02年のダブル受賞後、またも6年の空白期に入る。08年の物理学賞(3人)、化学賞ダブル受賞に日本国中が沸き、現在までの受賞ラッシュにつながっている。特に08年以降は13人を数え、「ノーベル賞常連国」と言ってもよさそうだ。

    <合わせて読みたい>
    ・30年目の「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(上)
    ・「ソメイヨシノ」はどこからやって来たのか
    ・日本人は独創的―大隅さんノーベル賞単独受賞の訳
    ・日本のAIは周回遅れ…杉山将・東京大教授に聞く

    2017年06月12日 12時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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