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    科学

    30年目の 「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(下)

    読売新聞調査研究本部主任研究員 佐藤良明
     今年30年目を迎えた「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(読売新聞社主催)の歩みを、「読売クオータリー」2017春号の論考で振り返る。3回目は、日本が今後もノーベル賞常連国の地位を維持するために何が必要なのかを考え、科学の未来を展望した。併せて、6月5日に行われた本フォーラム30年記念セッションの模様も紹介しよう。(文中の肩書は当時のまま)

    「50年で30人の受賞者」

    • 「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」30年記念セッションで講演する山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長(6月5日、イイノホールで)
      「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」30年記念セッションで講演する山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長(6月5日、イイノホールで)

     ノーベル賞自然科学部門での、いまの日本人受賞ラッシュは20~30年前の研究成果である。日本はこれからも高い科学水準を維持し、ノーベル賞常連国の地位を保っていけるのだろうか。これを考えるにあたり、まず政府の数値目標に触れておこう。2001年策定の第2期科学技術基本計画では基礎科学を振興させ「50年で30人程度」のノーベル賞受賞者を目指すとした。優れた研究業績を上げ、その結果として授けられるノーベル賞を、数値目標として掲げたことには賛否があり、注目を集めた。

     現実には「今後50年」の約3分の1にあたる年数がったところで、「目標」の半数を超える16人の日本人受賞者が出ている。他にも、ノーベル賞の前哨戦といわれる海外の著名な科学賞を受賞して有力候補と目される研究者も少なくない。基本計画ができた時に「実現可能性」が真剣に論じられることのなかった目標は、数字上はクリア可能な現実的指標に見える。

    基礎研究に危機感

     受賞ラッシュの背景には基礎科学への地道な支援があった。日本はそれを続けていけるのか。現状では期待よりも懸念の声が広がっているといえよう。

     運営費交付金、科研費、戦略的研究資金の3本立てになっている公的研究費のうち、各大学に配られる運営費交付金は、国立大学が独立法人化された2004年度以降、年間ほぼ1%のペースで減り続け、同年度に1兆2415億円だったのが16年度は1兆945億円になり、この12年間で1割以上減額されている。

     しかも、JST研究開発戦略センターが科学者に行ったヒアリングでは、一部の有力大学に研究資金が偏在し、全体として大学の研究活力が低下している点が指摘されている。運営費交付金が減り続けた結果、科研費など競争的資金の獲得競争が厳しくなっている。このため「はやりの研究」など採択されやすいテーマを選ぶ傾向が出てきている。「はやりを追わない」は、複数の日本人受賞者が強く訴えているポイントだが、現在の厳しい研究環境においては、背に腹はかえられないのだろうか。

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    2017年06月19日 09時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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