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    経済

    「駐車場シェア」が日本のビジネスを変える?

    みずほ総合研究所主任研究員 岡田豊

    駐車場シェアは「革新」を巻き起こすか

     今、駐車場シェアには、前述の楽天やリクルート以外にも大企業の参入が相次いでいる。例えば、トヨタ自動車は16年にakippaに出資し、トヨタ車に掲載されるカーナビゲーションシステムの一部でakippaの駐車場を検索できるようにした。そして、ついにタイムズのパーク24も16年に駐車場シェアサービス「B-Times(ビィ・タイムズ)」を始めた。

     サービス競争も熾烈(しれつ)になっている。楽天はおなじみの「楽天ポイント」を利用できるようにしているうえ、駐車場のオーナーに支払われる料金は業界最高水準とされている。入会金や月・年会費などを無料にしているケースも多い。

    • シードが展開するサービス。スマホを専用コーンにかざすだけで駐車場を借りられる
      シードが展開するサービス。スマホを専用コーンにかざすだけで駐車場を借りられる

     また、中堅コインパーキング運営会社の「スペース24」の関係会社でもあるシード(名古屋市)は、既存の駐車場シェアとは一線を画す「スマートパーキング」システムを導入。駐車場にスマホと通信できる「ビーコン」が搭載された専用のカラーコーンを置き、駐車場の空き状態をリアルタイムで把握できるようにしている。利用者は、駐車開始時にスマホをコーンに近づけるだけで簡単に入出庫の手続きができる。借りる際の事前予約が必要ないため、より柔軟に利用できるという。

     これらの動きは、駐車場シェアが有望な市場であるということに加え、全世界で実験が進む「自動運転車」の時代をにらんだ側面もあるといえる。自動運転車は究極的には運転手の役割を不要にする。人口減少で公共交通機関の維持が難しく、運転困難で移動手段もない高齢者の増加に悩む地方でまず普及が進むとみられ、将来的には大都市でも自動運転車のシェアが大きく伸びるだろう。

     自動運転車がいつでもどこでも乗り捨て可能になれば、タクシーやバスに比べて便利なうえ、駐車場に自動で駐車できれば、場内での事故減少も期待できるからだ。さらに進んで、自動運転車を個人が所有するようになれば、鉄道など公共交通機関の利用も減る可能性がある。そうなると、自動運転車を駐車するためのスペースは大量に必要となるはずで、駐車場も社会的にシェアされるのが一般的になる可能性がある。 

     今のところ、日本ではシェアサービスに「侵食」されている業界はあまりないように見える。一方で、海外では動きが激しい。16年に米サンフランシスコで大手タクシー会社が倒産した。これはUberなどのライドシェアサービスの拡大の影響だったとされ、Uberの名前をとって「ウーバライゼーション」と呼ばれるようになった。シェアサービスに「食われる」可能性のある業界が恐れる事例だ。

     しかし、駐車場シェアにおける企業間の競争が活発になれば、より革新的で、消費者にとって利便性の高いサービスの登場を促す可能性もある。駐車場シェアが日本でのシェアサービスの成功例の一つとなれば、あらゆるシェアリングに対する利用者の不安感が和らぎ、他のサービスの拡大へとつながっていくのかもしれない。

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    プロフィル
    岡田 豊(おかだ・ゆたか)
     1967年生まれ。慶応義塾大学卒業後、現在のみずほ総合研究所の前身・富士総合研究所に入社。地域経営、人口減少・少子高齢化、NPO・NGO、規制改革、CSR(企業の社会的責任)などが専門。著書に「地域活性化ビジネス~街おこしに企業の視点を活かそう」(編著、東洋経済新報社、2013年)など。NHK第一ラジオ「すっぴん!」レギュラーコメンテーターなども務める。

    2017年07月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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