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    文化

    「文庫X」の仕掛け人が明かす 書店での“遊び方”

    書店員 長江貴士
     本はコスパ(コストパフォーマンス)がメチャクチャ良い! インターネットの利用が当り前になり、情報が溢れている現代社会では、私たちはどうしても「心地良い情報」ばかり追い求めてしまいがち。しかし、昨年、日本中で話題になった「文庫X」の仕掛け人である長江貴士氏は、その状況に警鐘を鳴らす。そして、偏った情報によって作られる「常識」から抜け出すための手段として、「書店で本を選ぶこと」の重要性を指摘する。表紙をオリジナルのカバーで“覆面”し、タイトルと著者名がわからない謎の本として販売された「文庫X」。その発案者が伝授する「本屋の楽しみ方」とは――。

    「常識」という名の「偏見」

    • 「文庫X」は出版・書店業界の「常識」を打ち壊した
      「文庫X」は出版・書店業界の「常識」を打ち壊した

     今はそう感じていない人が実感するのは難しいだろうが、「本」というのは非常にコスパ(コストパフォーマンス)が良い。情報も物語も、インターネットを通じてほとんどタダで手に入る時代に、お金を払って読む「本」のどこがコスパが良いのかと疑問を抱いた方には、少しお時間をいただいて、僕の文章を読んでみてほしいと思う。

     かの有名な物理学者であるアインシュタインの名言に、こんなものがある。

     「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである」

     ネット時代に生きる僕たちは、このことを常に肝に銘じなければならない。そして今から僕は、「偏見」の集積である「常識」を逸脱するための手段として「本」はコスパが良い、という話を展開したいと思う。

    ネット社会と「心地良い情報」

     ちょっと自分の日常を振り返ってみてほしい。情報や物語のほとんどをネットを通じて手に入れている人が多いのではないか。さらに考えてみてほしい。手に入れるのは「どんな」情報や物語だろうか。

     僕なりにそれを表現すれば、「心地良い」情報や物語、ということになる。きっと皆、自分が心地良いと思えるものだけを取り入れているだろう。当たり前だ、と思うだろうか?しかし、そういうもの「だけ」を手に入れられるというのは、少し前の時代までは考えられなかった状況なのだ。

     一昔前、インターネットがまだ存在しなかった頃には、情報は、主に新聞やテレビから得るものだった。それらは、限られた発信者によって選別されたものであり、受け手側は限られた選択肢の中から情報を選ぶしかなかった。しかも、特に新聞に顕著に言えることだが、受け手側は「発信者」を選択することしかできず、個別の情報を選んで手に入れることは難しかった。新聞を開けば、心地良い情報だけではなく、自分が心地良いと感じられないものまでも、自然に視界に入るようになっていた。

     一方、今の時代、僕たちは様々な情報に自由にアクセスできるようになった。ネットの検索アルゴリズムが洗練されるに従って、発信者単位ではなく、情報や物語単位で好きなものにアクセスできるようになった。それゆえ僕たちは、心地良い情報や物語を簡単に手に入れることができるようになった。そういうもの「だけ」を取り込むことができるようになったのだ。

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    2017年07月28日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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