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    国際

    スマホ大国・中国、日本のはるか先を行くワケ

    キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 瀬口清之

    「馬跳び」型発展は、なぜ可能か

    • カラフルなシェア自転車に乗り、街を駆け抜ける人たち
      カラフルなシェア自転車に乗り、街を駆け抜ける人たち

     こうした便利なサービスが中国で爆発的に拡大・普及しているのは、元々十分なサービスが提供されていなかった分野に、スマホを活用した便利で安価なサービスが登場したことによる。

     日本では各家庭に固定電話が普及し、その後に携帯電話やスマホの時代がやってきた。ところが、固定電話の普及率が日本ほどではなかった中国は、固定電話が各家庭に普及する前に一足飛びに各自が携帯電話やスマホを持つ時代となった。

     中国では街の隅々にまで商店がなかったために、eコマースがそれにとって代わり、便利な金融サービスが提供されていなかったために、フィンテックが急速に発展したのである。

     このように利便性の高い新技術の登場により、ある段階の技術を飛び越え、次世代の先進技術が一気に普及する現象は、「馬跳び」(英語ではLeapfrog)型発展と呼ばれている。

     利便性の高いスマホ関連技術・サービスが急速に発展する背景には、個人情報の一元管理体制の存在があると考えられる。

     資金決済の相手や仲介業者が信用できなければ、気軽にスマホ決済はできないだろう。個人が安心して相互に決済できるのは、市場参加者の信用情報が一元的に管理され、決済相手の信用力が保証されているからである。

    • スマホの画面を見ながら道を歩く北京の人たち(AP)
      スマホの画面を見ながら道を歩く北京の人たち(AP)

     万一、支払い不能、あるいは不正などの問題が生じた場合には、すぐに摘発される仕組みが必要である。中国では個人情報が身分証番号に紐づけられて管理されているため、国家の監視の目から逃れることは極めて難しい。それが、個人の信用を保証する土台となっている。

     中国での個人情報管理は社会秩序の安定確保にも活用される。たとえば、自動車運転時のスピードや車線変更の違反、騒音制限地域でのクラクション使用などの交通違反は、違反者が即時に特定され、個人情報に登録される。その上で罰金を科されるのだ。

     証拠は、顔認証とリンクした身分証番号とともに個人情報として記録される。こうした技術を活用することで、航空券・高速鉄道切符の購入履歴から移動情報を把握したり、スマホによるショートメッセージの送受信記録から交友関係を把握したりすることも可能となっている。

     中国の友人たちにこうした個人情報が一元的に管理されることについて抵抗はないのかと質問すると、中国ではスマホ社会に移行する前から元々個人情報の管理が社会秩序維持の大前提になっているので、それを気にする人は多くないとの答えが返ってきた。

     日本では個人情報保護の観点から、こうした管理システムは採用されていない。このため、中国ほどスマホが社会の隅々にまで浸透するのは難しいかもしれない。

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    2017年08月16日 09時38分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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