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    国際

    バノン氏辞任でも「米国第一」は終わらない

    住友商事グローバルリサーチ・シニアアナリスト 足立正彦
     米トランプ政権の迷走が続いている。ホワイトハウス高官の交代が相次ぐ中、8月18日にはトランプ大統領の最側近であるスティーブン・バノン大統領上級顧問・首席戦略官が辞任した。「米国第一」を主導し、移民・難民の入国規制の強化などの過激な政策を推進してきたバノン氏は政権を去ったが、トランプ政権が安定に向かうと見るのは早計のようだ。米国政治をウォッチしている住友商事グローバルリサーチ・シニアアナリストの足立正彦さんに寄稿してもらった。

    対立の「震源」だったバノン氏

    • 大統領上級顧問・首席戦略官を辞任したスティーブン・バノン氏(ロイター)
      大統領上級顧問・首席戦略官を辞任したスティーブン・バノン氏(ロイター)

     スティーブン・バノン大統領上級顧問・首席戦略官の突然の辞任は、白人至上主義団体と反対派の衝突事件を巡り、トランプ大統領への批判が強まる中、発表された。

     12日、南部バージニア州シャーロッツビルで発生した白人至上主義団体と反対派の衝突は、犠牲者まで出してしまったが、トランプ大統領は「非は双方にある」などと発言。白人至上主義者に十分な批判をしていないとして、党派を超えた有力政治家や経済界トップ、米軍幹部など、各方面から厳しい批判にさらされていた。

     トランプ大統領は、人種差別的な考えを持つとされるバノン氏を辞任させることで、政権への批判をかわし、政権浮揚につなげる狙いがあったと見られている。

     バノン氏は、昨年8月に保守系メディア「ブライトバート・ニュース」会長からトランプ選対本部の最高責任者に就任した。支持率で大きく水を開けられていた民主党のヒラリー・クリントン氏を逆転し、トランプ氏に大統領選挙での歴史的勝利をもたらした立役者でもある。

     トランプ政権発足後は、「米国第一」を掲げ、環太平洋経済連携協定(TPP)からの米国の永久離脱、移民・難民の入国規制、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱といった一連の政策に多大な影響力を行使してきた。

     ただし、バノン氏の「米国第一」主義は、政権内で様々な対立を生み出した。「米国第一」に基づく経済・通商政策を積極的に推進する「経済ナショナリスト」のバノン氏と、投資銀行大手ゴールドマン・サックスの社長兼最高執行責任者(COO)から政権入りした国際主義者である「グローバリスト」のゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)議長との関係は、まさに「水と油」であった。

     バノン氏はリベラル寄りの政治雑誌「アメリカン・プロスペクト」の取材に対し、コーン氏との対立を明らかにした上で、コーン氏を公然と批判した。2人の対立は、コーン氏に政権入りを要請し、懇意な関係にあるジャレッド・クシュナー(大統領の娘婿)夫妻や、バノン氏に近い立場のウィルバー・ロス商務長官、ピーター・ナバロ通商製造業政策局長、スティーブン・ミラー大統領上級顧問(政策担当)といった高官も巻き込み、激化していた。

     さらに最近になって、対外介入に一貫して慎重姿勢を見せてきたバノン氏は、対アフガニスタン政策を巡ってマクマスター大統領補佐官とのすれ違いも表面化。バノン氏と歩調を合わせる形で「ブライトバート・ニュース」もマクマスター批判を強めていた。

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    2017年08月24日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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