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    国際

    北朝鮮、核開発能力を誇示

    龍谷大学教授 李相哲
     北朝鮮が9月3日、6回目の核実験を強行した。朝鮮中央テレビは午後3時(日本時間同3時半)の重大報道で、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の装着用の水素爆弾の実験で完全に成功した」と発表した。今回の核実験の狙いと国際社会に与える影響について、龍谷大学の李相哲教授に聞いた(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    • 北朝鮮の核実験実施を伝えるニュースを見る人たち(3日午後2時12分、大阪空港で)
      北朝鮮の核実験実施を伝えるニュースを見る人たち(3日午後2時12分、大阪空港で)

     ――北朝鮮が6回目となる核実験を強行しました。その意味をどう考えますか。

     実験当時、私は中国北東部の吉林省・延吉市の博物館にいて、揺れを感じました。博物館の方の話では、建物はとても頑丈なので通常なら絶対揺れない。そもそも、延吉は地震がない地域です。だから、これは北朝鮮が核実験をしたのだろうと思いました。

     今回の核実験は、ひとつは威力が大きい水爆で実験を行う能力があること、もう一つはICBMに載せられるほど小型化できること、その2つを国際社会にアピールするのが一番大きな狙いです。

     ――国際社会の制止を振り切って核実験を行った理由は何でしょうか。

     私はずっと前から、北朝鮮は核・ミサイル技術が完成するまでは止めないだろうと主張し続けてきました。核実験を6回目まで行い、ICBMを完成させることで、北朝鮮を核保有国と認めざるをえないような状況を作りたい。

     北朝鮮の意図ははっきりしていて、米国に対し、北の核放棄を前提にした話はもうやめなさい、そういうことを前提とせずに話し合いに来るなら応じましょう、というものです。おそらく、軍縮会議のようなものを米国に提案したいはずです。

    • 核兵器の開発施設を視察し、指示を与える金正恩・朝鮮労働党委員長(中央)。この写真の撮影日時は不明。朝鮮中央通信が9月3日に配信した(ロイター)
      核兵器の開発施設を視察し、指示を与える金正恩・朝鮮労働党委員長(中央)。この写真の撮影日時は不明。朝鮮中央通信が9月3日に配信した(ロイター)

     ――グアム沖にミサイルを撃つことに関しては、トランプ米大統領の警告がありました。北朝鮮は、核実験をしても大丈夫だと見たのでしょうか。

     核実験をしたとしても、米国はすぐに(北朝鮮を)攻撃できる状況ではありません。もし軍事行動を起こすのであれば、少なくとも数か月かかるでしょう。時間差があるので、北朝鮮はとにかくまず核実験をやってしまって、その後、本当に危機が高まった時期、明日にでも先制攻撃が行われそうな時点で、話し合っても遅くないと判断したはずです。

     ――北朝鮮メディアは「ICBMに載せる水爆実験に成功した」と発表しました。

     彼らが目標としているものが完全に完成したという宣言だと思います。米韓当局はミサイルの大気圏再突入技術はまだ完成していないから、まだ少し時間があるという認識ですが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は先月、化学材料研究所というICBMの素材を研究する施設を訪問し、(その写真を撮らせて)化学材料をわざと見せています。それを見せたことと今回の核実験はつなげて考える必要があります。つまり、我々は再突入技術をすでに確立し、しかもICBMに載せる水爆まで持っているのだと恫喝(どうかつ)しているのです。

    • 北朝鮮の核実験を受けて、記者の質問に応じる安倍首相(3日午後6時8分、首相官邸で)
      北朝鮮の核実験を受けて、記者の質問に応じる安倍首相(3日午後6時8分、首相官邸で)

     ――北朝鮮の核実験に反対していた中国が今回、止められなかったのはなぜですか。

     中国はそもそも本気ではないと思います。中国の人が言っていたのですが、「片方の目は開けて、もう片方はつぶっている」と。つまり、見て見ぬふりをしているということです。中国は今回も決定的な行動には出ないのではないかと思います。10月に5年に1度の共産党大会を控えていますし、国際社会の反応を沈静化させながら、ゆっくり出口を考えたいと思っているのではないでしょうか。

     ――米国はどう出るでしょうか。

     米国はまず、中国に対して最大限できることをやるでしょう。例えば、追加のセカンダリーボイコット、つまり、北朝鮮と取引がある中国企業などに対する制裁、その対象リストを発表するといったことが考えられます。

     その一方で、軍事行動を視野に入れた準備に着手する可能性もありますが、時間もかかります。今、米国が軽々しく動ける状況ではありません。しかも、同盟国の中で、韓国が少し離脱気味です。そこが一番、頭が痛いのではないでしょうか。

     ――北朝鮮の今回の核実験、日本にとってはどんな影響があるのでしょうか。

     直接的に日本に何かが起こるということではありませんが、放っておくと「核を持つ北朝鮮」と向き合わなければなりません。日本は安全保障に関する考えを大きく変える必要があります。これまでの消極的な防衛、Jアラートをどうするかとか、防衛システムをどうするかとか、そういうことだけではなく、もう少し踏み込んだ、積極的な防衛を考える時期に来ているのではないでしょうか。

    プロフィル
    李 相哲( り・そうてつ
     龍谷大学社会学部教授。1959年、中国・黒龍江省生まれ。北京中央民族大学卒業後、中国の日刊紙記者を経て87年に来日。95年、上智大学大学院文学研究科新聞学専攻で博士号(新聞学)取得。上智大学国際関係研究所客員研究員などを経て98年、龍谷大学社会学部助教授。2005年より現職。主な著書に『朴槿惠<パク・クネ>の挑戦 ―ムクゲの花が咲くとき』(中央公論新社)、『金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか』(産経新聞出版)などがある。

     【あわせて読みたい】

     ・北朝鮮・金正恩体制が制裁にビクともしない理由

     ・北朝鮮、6回目の核実験

    2017年09月03日 21時06分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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