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    芸能

    アカデミー賞「フェンス」はなぜ劇場未公開なのか

    読売新聞調査研究本部主任研究員 福永聖二
     週末に見に行く映画を選ぶ時、あなたは何を基準に選ぶだろうか。新聞や雑誌の映画評? 直近の動員ランキング? ネット上のクチコミ? 映画ファンの中には、「有名な映画祭で主要な賞を受けた作品はチェックしたい」という人も多いだろう。ところが今年、世界の注目を集める米アカデミー賞主要部門の賞に輝いた1本の秀作が、日本の映画館では公開されないという事態が起きた。「劇場未公開のアカデミー賞受賞作」をめぐる事情について、映画記者歴23年の読売新聞調査研究本部・福永聖二主任研究員が解説する。

    4部門でノミネート、助演女優賞に輝いたのに……

     「劇場未公開のアカデミー賞作品」となったのは、米映画界のスター、デンゼル・ワシントンが監督、主演した映画「フェンス」(2016年製作)。今年2月に発表された第89回アカデミー賞で、作品賞、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞と4部門でノミネートされ、最終的にビオラ・デイビスが助演女優賞に輝いた作品だ。

    • 映画「フェンス」のDVD、ブルーレイのジャケット(発売元=NBCユニバーサル・エンターテイメント)
      映画「フェンス」のDVD、ブルーレイのジャケット(発売元=NBCユニバーサル・エンターテイメント)

     ワシントン自身も、アカデミー賞を2回受賞(1989年「グローリー」で助演男優賞、2001年「トレーニング・デイ」で主演男優賞)しており、当然ながら監督、主演した新作は米国でも大きく注目された。ところが、それだけの作品でありながら、授賞式後も日本では上映の機会に恵まれず、6月になってようやくDVD、ブルーレイが発売された。劇場未公開作がDVD化されるのはごく普通のことだが、この映画の場合は話が違う。アカデミー賞主要部門を受賞しながら劇場公開されなかったのは極めて異例なケースだと言えるだろう。

     今年のアカデミー賞受賞作の日本国内での公開状況を見ると、衣装デザイン賞受賞の「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」が興収73億円を上げ、監督賞、主演女優賞(エマ・ストーン)など最多6部門受賞の「ラ・ラ・ランド」も興収44億円と大ヒットとなった。このほか作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)の「ムーンライト」はもちろん、ケイシー・アフレックが主演男優賞を獲得した「マンチェスター・バイ・ザ・シー」、長編アニメ映画賞の「ズートピア」、外国語映画賞の「セールスマン」など受賞作のほとんどが日本で公開されている。全24部門のうち未公開なのは、助演女優賞の「フェンス」のほか、長編、短編のドキュメンタリー映画賞と短編映画賞の計4部門だけだ。

     「フェンス」は、アフリカ系アメリカ人の劇作家、オーガスト・ウィルソンの同名戯曲が原作だ。1987年にブロードウェーで初演され、米演劇界最高の栄誉であるトニー賞で、作品賞、主演男優賞(ジェームズ・アール・ジョーンズ)を含む4部門で受賞を果たし、ピュリツァー賞(戯曲部門)にも輝いた。デンゼル・ワシントンが主演を張った2010年の再演でも、トニー賞のリバイバル作品賞のほか、ワシントンが主演男優賞、妻役のビオラ・デイビスが主演女優賞をそれぞれ獲得している。今回の映画化にあたっては、再演舞台に出演した俳優たちがほぼ全員同じ役を演じ、ワシントンが自ら監督を務めた。

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    2017年09月06日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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