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    国際

    北朝鮮ミサイル発射は「日本に対する挑戦」

    宮塚コリア研究所代表・宮塚利雄
     北朝鮮は9月15日早朝、弾道ミサイル1発を発射した。北海道上空を通過したミサイルは、襟裳岬の東方約2200キロ・メートルの太平洋上に落下。国連安全保障理事会の追加制裁決議にもかかわらず、北朝鮮は今年14回目の弾道ミサイル発射を強行した。今回の発射は何を狙ったものなのか。宮塚コリア研究所の宮塚利雄代表に聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    • 北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、記者の質問に答える小野寺防衛相(9月15日午前10時36分、防衛省で)
      北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、記者の質問に答える小野寺防衛相(9月15日午前10時36分、防衛省で)

    ――今回のミサイル発射は何を狙ったものか?

     「一つは国連安保理で採択された北朝鮮に対する追加制裁決議への反発だ。また、北朝鮮は13日に『取るに足らない四つの島を核爆弾で海の中にぶち込むべきだ』と日本を威嚇し、その2日後にミサイルを日本上空に飛ばした。『米国に追随することばかりやっていると、いつでも核の攻撃対象になる』と言って、それを実践した。これは日本に対する挑戦である」

    ――わざわざ日本に言及したのはなぜか?

     「安倍首相が北朝鮮に対する制裁への協力を呼びかけるなど、北朝鮮にとって日本は、米国以上に国際社会で無視できない存在だからだ。それと、日本ではJアラートによる警戒体制はまだ完全ではない。北朝鮮はミサイルを飛ばすことによって、日本国内の反応を試している。ある意味で、日本をあざ笑うようなことをしたかったのではないか」

    ――国際社会からの締め付けにもかかわらず、金正恩(キムジョンウン)体制がいまだに崩壊の兆しを見せていない理由は?

     「北朝鮮を建国した金日成(キムイルソン)主席からの遺訓を今も守っているからだ。その遺訓というのは『ともかく核を持て。核を積んだミサイルがワシントンを火の海にする能力を持ってから、米国との休戦協定を平和協定に変える交渉をする段階に持っていけ』というものだ。だから、北朝鮮のミサイル発射はこれからも続く。日本の国会議員が北朝鮮に行っても、彼らの言うことには全く聞く耳を持たないだろう。大気圏への再突入技術などはまだ完成していないと見られるので、確実にワシントンを火の海にする能力を持つまで何回でもミサイルを飛ばして技術を高めようとするとみられる」

    ――北朝鮮国民の金正恩・朝鮮労働党委員長に対する支持は揺るぎないのか?

     「これは一概には判断できない。平壌の市民は北朝鮮では恵まれた階級にいる。そういう人たちが集まって、反米集会などを開いて『米国をやっつけろ』などとスローガンを叫んでいる。地方の人々には、果たしてそんな余裕があるのか。かなり生活は厳しい。核兵器などは二の次でいい、三度のメシを食わせてくれれば指導者はだれでもいいというようなことを思っている。だが、『物言えば唇寒し』の国なので、金正恩委員長に対する不満は思っていても言えない。外からの判断は難しい」

    • 北朝鮮の弾道ミサイル発射を伝える号外を手にする人たち(15日午前9時35分、東京都港区で)
      北朝鮮の弾道ミサイル発射を伝える号外を手にする人たち(15日午前9時35分、東京都港区で)

    ――制裁での人々の生活に影響は出始めているか?

     「まず、中国がなぜ制裁に消極的かというと、核を持つ北朝鮮よりも崩壊した北朝鮮が怖いからだ。中国は、安保理では一応制裁の賛成に回るなど、制裁に協力するそぶりを見せたが、やはり北朝鮮が崩壊したら困ると思っている。制裁は、一部の平壌市民などには影響があるかもしれないが、基本的には庶民生活にまでは及ばないだろう」

    ――庶民の関心は、やはり「三度のメシが食えるか」いうことか?

     「日本では『衣食足りて礼節を知る』といわれるが、北朝鮮のスローガンは『食衣住』という順番だ。まず食の問題を解決してから、衣類、住居の問題に取り組んでいくということだ。これは、金日成主席の時代から変わっていない。つまり、金正恩委員長の時代になっても食の問題は解決していないということだ。庶民の反発不満はあると思う」

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    プロフィル
    宮塚 利雄(みやつか・としお)
     宮塚コリア研究所代表。元山梨学院大学教授。1976年に韓国・慶煕大学校大学院経済学科 碩士 ( せきし ) 課程(日本の修士課程に相当)修了。80年、檀国大学校大学院経済学科博士課程単位取得。様々な日用品や生活資料から北朝鮮の実情を探るという研究を続けてきた。2013年、川崎市に宮塚コリア研究所開所。主な著書に『北朝鮮・驚愕の教科書』(娘の寿美子さんとの共著、文藝春秋)など。

    2017年09月15日 13時37分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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