文字サイズ
    経済

    財政難、高齢化…インフラ整備をどう進めるべきか

    日本プロジェクト産業協議会会長 宗岡正二

    国民に問うべきこと

    ――インフラ整備を進める上で必要なのはどんなことでしょう?

     現状ですと、公共投資に振り向ける予算は、日本の財政規模からしてオーバーキル(削減し過ぎ)の状態にあると思います。厳しい財政事情の下、限りある資源を我々世代のためだけに費消するのではなく、消費税を予定通り引き上げる一方で社会福祉を効率化するなど財政再建にメドをつけた上で、停滞しているインフラ整備について、どの分野にいかなる順番で資源を投入していくのかを国民に問わないといけないと思います。

    • 老朽化し多数のひび割れが補修されている首都高速羽田線の東品川桟橋(2013年撮影)
      老朽化し多数のひび割れが補修されている首都高速羽田線の東品川桟橋(2013年撮影)

     老朽化したインフラの問題などはあまねく広く調査して、要不要を判定する。時代が変わり、人口動態や物流量なども変わっているのですから、きっちり精査して、インフラの統廃合や更新を進めていくプロセスが不可欠です。PFI(公共施設などの設計、建設や維持管理・運営を、民間の資金とノウハウを活用して行うこと)の枠組みなどを導入することも有効でしょう。

    ――人手不足や人口減少、高齢化など、インフラ整備に関連する業界にとっては厳しい環境でもあります。

     少子高齢化が進展する中で、女性の活躍や、日本の建設業の技術に関心を持っている外国人などを積極的に活用していくことが必要だと考えます。最近は技術の進歩でGPS(全地球測位システム)を活用した自動運転の建設機械なども新たに生まれてきており、生産性を向上させるためにも、こうした技術や機器をうまく活用することが重要だと思います。

    ――トランプ米大統領が米国内のインフラ整備を打ち出しています。その後の政権運営で財源の捻出が難しくなり、ややトーンダウンしていますが、アメリカのこうした動きは日本にも影響するでしょうか

     直接的には影響しないと思います。日本に何らかの影響があるとすれば、都市間の高速鉄道の整備でしょう。私どもJAPICは日本国内を中心に議論していますが、構成メンバーの中からは「海外に目を向けてみてはどうか」という意見もあり、今後はそうした点も意識して議論していきたいと思っています。

    ――わが国のインフラ整備のグランドデザインは誰が出すべきでしょうか?

     それは、やはり政治家の役割でしょう。政治家の職務は、わが国の領土、そして国民の安全・安心を守ることを第一に、人口減少や高齢化が進む中で、国家全体の不都合な真実なり、将来の課題を国民に示し、理解を求め、政策を実行していくことだと思います。インフラ整備も(しか)りで、自らの選挙地盤への景気対策などという矮小な視点を捨て、将来世代の利益や負担にも思いをいたし、国民の安全・安心と長期的な経済成長、そして国民の生活水準の向上のために必要な産業・生活基盤となるインフラは何なのか、優先順位を付けて提示していくべきではないでしょうか。啓発という意味ではマスコミにも大いに期待しています。

    〈日本プロジェクト産業協議会〉
     1979年設立。37業種・200社を超える企業、地方自治体、団体、NPO等から構成。年間延べ約1万人の実務家が公益的な立場から、業際的協力や産官学民の交流を通じて具体的なプロジェクト・政策提言、テーマ研究などを行っている。

    【あわせて読みたい】
    浅川財務官に聞く世界経済動向、焦点は中国新体制
    2050年、日本人の仕事はAIと中国に奪われるのか
    「西洋」の価値は崩れるか?ビル・エモット氏に聞く
    分裂、乱高下…ビットコインに何が起きているのか

    プロフィル
    宗岡正二( むねおか・しょうじ
     1946年山口県生まれ。70年東京大学農学部農業経済学科卒、新日本製鐵入社。常務取締役薄板事業部長、副社長を経て2008年4月社長に就任。12年10月、住友金属工業との経営統合で誕生した新日鉄住金の会長兼CEOに就任、14年4月より会長。14年6月JAPIC会長に就任。

    2017年10月02日 09時56分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP