文字サイズ
    社会

    次の焦点は受信料改革に…NHK、ネット同時配信で方針転換

    読売新聞メディア局編集部次長 中村宏之
     NHKが実現を目指しているテレビ番組のインターネット常時同時配信(ネット同時配信)を巡り、NHKが「ネット受信料」という発想を事実上、撤回し、ネット事業は放送の補完業務にとどめる考えを表明した。総務省や民放各社の主張を全面的に受け入れた形だが、昨年秋以降の一連の動きから、現行の受信料制度が時代に合わなくなっていることが浮き彫りになったのは間違いない。NHK受信料を巡っては最高裁大法廷の判決も控えており、今後は受信料改革が議論の主戦場となりそうだ。(読売新聞メディア局編集部次長 中村宏之)

    NHKが方針撤回

     NHKの坂本忠宣専務理事は9月20日の総務省「諸課題検討会」(正式名称=「放送を巡る諸課題に関する検討会」)で、「(インターネット)常時同時配信は放送の補完と位置付ける」と強調したうえで、「公平負担の観点も考慮し、常時同時配信の開始時のサービスは受信契約世帯向けに設計し、受信契約世帯の(家族などの)構成員は追加負担なく利用できるようにする」と述べた。

     坂本専務理事は7月4日の前回会合で、「将来的には(放送と並ぶ)本来業務と考えている」と述べ、ネット利用者にも受信料を課したいとの考えを表明していたので、今回の発言は事実上の方針撤回と受け止めていいだろう。

     なぜ方針撤回と言えるのか。その理解を助けるために、「本来業務」と「補完業務」の違いをおさらいしておこう。

     放送法20条はNHKの行う業務を規定し、同条1項で「国内基幹放送を行うこと」と定めている。これが「本来業務」(必須業務ともいう)である。一方、同条2項で「次の業務を行うことができる」として、ネット事業などいくつかの事業を列記している。こちらが放送の「補完業務」(任意業務ともいう)だ。本来業務は受信料で賄う業務であるのに対して、ネット事業の場合はNHKのインターネット実施基準で、費用を「各年度の受信料収入の2.5%を上限とすること」と定められており、基準の見直しには総務省の認可が必要となる。

     つまり、坂本専務理事の「本来業務」発言は、ネット事業を放送と並ぶ業務と位置付けて受信料を制限なく課せるようにし、ネット利用者にも受信料の網をかけるようにしたい――という意図が込められた発言だった。それを、放送の補完業務にとどめて同時配信を受信契約世帯向けのサービスと位置付けるという。これはすなわち、費用の制約はこれまで通り甘受し、ネット利用者に費用負担させる道も当面、断念する――ということだ。

     坂本専務理事の発言をつぶさに確認していくと、「2019年度にサービスを開始する」「地域放送番組の配信は段階的に拡充し、その際、地域制限を行う」と言っている。「放送法で『地方向けの放送番組』を義務付けられているNHKの場合、地域制御は必須の機能であって、そのシステムが整備されるまでは(サービスではなく)試験的対応と位置付けるべきだ」と主張する民放側の考え方とは、まだまだ隔たりがあるのが実情だ。

     また、「常時同時配信にかかる費用は総額の上限を定めて運用する」という言い方もしており、現行の2.5%上限の引き上げについてはあきらめていないような印象も受ける。民放各社で作る日本民間放送連盟(民放連)は、NHKに対する要望で「2.5%上限の堅持」を掲げているので、これも引き続き民放との間で“綱引き”の材料となるだろう。

    【あわせて読みたい】
    NHK「ネット受信料」はなぜ問題か…「公共性」腰据えて議論を
    ネット配信利用者にも受信料……NHKが開けた「パンドラの箱」?
    NHKと民放、ネット同時配信めぐりバトル

    2017年09月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP