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    国際

    韓国・文在寅政権を突き動かす「ある願望」とは

    読売新聞論説委員 森千春
     米国と北朝鮮の軍事的緊張が高まる中、韓国の左派、 文在寅 ( ムンジェイン ) 政権が軍備増強に乗り出している。北朝鮮の軍事的脅威に対応するという喫緊の課題に追われつつも、米国の制約から脱し独自の戦力を整備するという夢を追っている。韓国は、転んでもただでは起きない、したたかな国家なのだ。

    韓国軍人の強烈な言葉

    • 北朝鮮が弾道ミサイルを発射した9月15日、韓国軍は弾道ミサイル「玄武2」の発射訓練を行なった(韓国国防省提供、聨合ロイター)
      北朝鮮が弾道ミサイルを発射した9月15日、韓国軍は弾道ミサイル「玄武2」の発射訓練を行なった(韓国国防省提供、聨合ロイター)

     北朝鮮が発射した弾道ミサイル「火星12」が北海道上空を通過した8月29日、会議に出席するためソウルにいた。テレビのニュースが、韓国空軍が爆撃訓練を行ったと報じた。訓練を指揮した編隊長が、テレビカメラに向かって「北朝鮮が韓国国民の生命を脅かすならば、指導部を殲滅(せんめつ)します!」と力強く言ったので驚いた。当然、当局の意向をうけた発言である。

     北朝鮮に融和的な姿勢でスタートした文在寅政権だが、北朝鮮の度重なる軍事挑発で、ここまで強硬なメッセージを発せざるを得なくなったのだ。

     背景には、米国と北朝鮮の間の緊張が高まったことがある。北朝鮮が、米領グアム周辺へのミサイル発射作戦計画を発表して以降、トランプ政権は北朝鮮への圧力強化に傾斜した。韓国も足並みを(そろ)えざるを得ない。文政権は、中国の反対に配慮して延期していた、米ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」の在韓米軍への追加配備も認めた。

     確かに韓国の対北朝鮮政策は、右往左往している観がある。だが、その中で韓国は長年の願望を果たしていたのである。

     9月4日、トランプ大統領と文大統領の電話会談で、韓国が開発・保有する弾道ミサイルの性能に米国が課していた制限を緩和することで原則合意したのだ。弾頭の重量を500キロ・グラムまでとする制約をなくすという。

     北朝鮮が9月15日、再び弾道ミサイルを発射すると、韓国軍はほぼ同時に、弾道ミサイル「玄武2」の発射訓練を行った。その3日前には、ドイツから導入した空対地ミサイル「タウルス」を用いた精密攻撃の訓練もした。韓国軍のミサイル関連活動は活発化している。

     ミサイルだけではない。韓国政府内部からは、原子力潜水艦の建造・保有を検討すべきだという声が公然と上がっている。

     ()洛淵(ナギョン)首相は8月16日、テレビのニュース番組に出演して「原潜導入を検討すべき時期が来た」と語った。

     ワシントンに拠点を置く朝鮮半島専門ラジオ局、自由アジア放送によると、韓国の青瓦台(チョンワデ)(大統領府)の高官は、「韓国軍の防衛能力向上のためにもっとも効果的な戦力は原子力潜水艦だ」という点で、政府内で合意ができていると語った。韓国の専門家の間では、原子力技術、潜水艦建造の実績を持つ韓国は、政治的決定が出されれば、2、3年で原潜を建造することが可能だとの見立てが出ているという。中国、インドに続きアジアで3番目の原潜保有国になるというのは、韓国海軍の夢である。

     韓国における原子力利用の方法は、米韓原子力協定によって制限されている。原潜保有が現実味を持つかどうかは、今後の米国の対応次第だ。

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    2017年10月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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