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    スポーツ

    桐生と山県…10秒の壁をめぐるライバル物語

    読売新聞大阪本社運動部 平野和彦

    2人とも「体作り」に力を入れた

    • 全日本実業団対抗男子100メートル決勝で惜しくも9秒台を逃して悔しがる山県(2017年9月24日、吉野拓也撮影)
      全日本実業団対抗男子100メートル決勝で惜しくも9秒台を逃して悔しがる山県(2017年9月24日、吉野拓也撮影)

     力は互角の2人だが、走りのタイプは異なる。

     桐生は接地した際の感覚が鋭く、一瞬でパワーを発揮できるのが強みだ。短距離のスパイクは走りやすくするため、一般的にソール(靴底)のつま先が上に反っているが、彼のシューズはほぼフラットに作られている。瞬間的にバンと地面に力を伝えたいという桐生の要望に応えたものだ。

     パワーを生かした桐生の武器は、トップ(最大)スピードにある。

     日本陸連の科学委員会によると、9秒台を出すには「秒速11.60メートル台」が必要とされるが、桐生は高校生の頃から秒速11.64メートル(推測値)をマークしており、すでに9秒台の力を備えていると見られていた。大学入学後は秒速11.70メートルまで高めている。

     ただ、ギアを一気に上げられる反面、終盤に上体がのけぞって減速するという欠点があった。そこで、昨冬からアテネ五輪男子ハンマー投げ金メダルの室伏広治氏のもとで、体幹を鍛えるトレーニングを始めた。桐生は「軸が安定して最後までスピードが落ちなくなった」と手応えを感じ、持ち味の加速力を生かし切れるようになった。

     山県は逆に、トップスピードが足りなかった。

     10秒05をマークしたリオデジャネイロ五輪の準決勝も、秒速11.42メートルにとどまった。スタートに定評があり、ゴール前のスピードの低下を抑えるのもうまい。しかし、出力では桐生に見劣りした。

     そこで、パワーを上げるため、山県は、数々のトップ選手を指導してきた仲田健トレーナーに2015年夏から指導を仰ぐようになった。「筋力は強かったが、筋肉のバランスや体の使い方の効率が悪かった」と仲田トレーナー。不安定なストレッチポールの上で腹筋運動をするなど、一日50~100種類に及ぶメニューをこなし、体重は3、4キロ増の73キロになった。

     「目指しているのは、自分のエンジンを大きくして、自然とピッチが上がり、ストライドが伸びる状態を作り出すこと」と山県。今年3月のレースでは秒速11.58メートルを記録し、10秒00をマークした9月のレースでも、「良かったのは中盤の加速。そこに、磨きをかけてこようと思っていたので」とトップスピードの向上を感じ取った。

     2人に共通するのは、「体作り」に力を入れた点にある。足りなかったピースを少しずつ埋めることで成長につなげてきた。

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    2017年10月03日 07時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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