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    スポーツ

    桐生と山県…10秒の壁をめぐるライバル物語

    読売新聞大阪本社運動部 平野和彦

    2人とも今年の日本選手権では敗れた

    • 今年の日本選手権男子100メートル決勝。桐生(左から2人目)は4位、山県(右から2人目)は6位に終わった(2017年6月24日)
      今年の日本選手権男子100メートル決勝。桐生(左から2人目)は4位、山県(右から2人目)は6位に終わった(2017年6月24日)

     2人のこれまでを振り返ってみよう。

     先に9秒台を期待されたのは、山県だった。

     慶大2年だった2012年4月に10秒08をマークし、8月のロンドン五輪で10秒07まで記録を縮めた。専属コーチを置かず、自分で練習メニューを考える異色のスタイルで好記録を連発して、「9秒台に最も近い男」と目された。

     翌年、彗星のごとく現れたのが、桐生だった。

     坊主頭の高校3年生は、13年4月の織田記念で伸び伸びと走り、山県の目前で10秒01をマーク。「楽しんで走るのが目標だったので、そんなに緊張しなかった」と屈託がなかったが、潜在能力の高さは明らかだった。

     荒々しい走りの桐生か、洗練されたフォームの山県か。

     ライバル物語が始まり、近い将来、どちらかが9秒台を出すと思われた。

     しかし、予想に反して、2人はここから苦難の道をたどる。

     桐生は東洋大に入学した14年以降、ケガを繰り返した。特に15年は、3月に追い風参考記録ながら9秒87をマークしただけに、その後、右太もも裏を肉離れした時はショックを隠せなかった。代表を逃したその夏の世界選手権は、「自分はなんでここ(大学の寮)にいるんだろう」と落ち込み、まともにレースを見られなかった。

     一方、山県も社会人1年目の15年、腰痛を悪化させてシーズンをほぼ棒に振った。カール・ルイス(米)ら世界のアスリートをみてきた鍼灸(しんきゅう)師の白石宏さんの懸命の治療で、ようやく翌年に戦列復帰を果たしたが、一時は「会社に陸上をさせてもらう身。勝負できないのなら、陸上をやめよう」と思い詰めたほどだった。

     今年6月の日本選手権では、桐生が調整ミスで4位に沈み、春に右足首を痛めた山県は6位に終わった。ともに、個人種目での世界選手権代表を逃した。

     新王者のサニブラウン・ハキームがカメラのフラッシュに包まれるなか、桐生は山県に歩み寄り、握手を求めた。「僕ら2人で(短距離界を)作ってきたから」。2人で巻き返そう、という意思の表れだった。

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    2017年10月03日 07時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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