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    スポーツ

    桐生と山県…10秒の壁をめぐるライバル物語

    読売新聞大阪本社運動部 平野和彦

    ライバルは多くても2人の関係は特別

    • 合同合宿を行う豪州への出発を前に、今季の健闘を誓い合った桐生(左)と山県(2017年2月28日、塩見要次郎撮影)
      合同合宿を行う豪州への出発を前に、今季の健闘を誓い合った桐生(左)と山県(2017年2月28日、塩見要次郎撮影)

     今季が始まる前、2人にインタビューした際、お互いの印象を聞いてみた。

     桐生「山県さんはずっとテレビで見ていた人。ロンドン五輪の頃は、同じ舞台に立てると思っていなかった」「陸上に対する集中力が違う。練習でも一人でとことんできる。毎回の練習に、すごいパワーを入れているというか。僕は起きた時に『今日だるいな』と思ったら(そこまでの練習は)できない。山県さんは僕が知る限り、それはない」

     山県「同じ9秒台へ向かって切磋琢磨しているライバルだし、ともに成長していきたい仲間という意識はある」「体の使い方とか、見ていてすごいなと思う。彼にあって自分にないものは何だろうとか、考えるきっかけをもらった。彼は僕のために走っているわけじゃないけど、おかげで自分もレベルアップするきっかけをつかめた」

     補足すれば、桐生が素直に山県に憧れていた一方で、山県は当初、「ただ負けたくないという思いでとんがっていた気がする。彼がなんで速いのか、整理できなかった」と、相手の強さを受け入れられなかった。

     山県の心境に変化が訪れたのは、2年前に仲田トレーナーと出会ってからだ。桐生への対抗意識を「弱さ」と考え、胸の奥に隠そうとする山県を、仲田トレーナーは諭した。「気にしていいから。感情を抑える必要はないから。もっとオープンに、感情を出してもいい」。山県から変なプライドが消え、桐生の映像を見て走りの参考にするようになった。

     日本では、サニブラウンをはじめ、ケンブリッジ飛鳥、多田修平ら、いつ9秒台に突入してもおかしくない選手が次々と現れている。

     力は横一線に近いが、その中でも、桐生と山県の関係は特別だ。

     桐生は言う。「山県さんとは常に勝負しているという思いがある。陸上なので1番、2番という順位はつくが、競い合って、楽しんでレースをしていきたい」。東京五輪を目指す2人の物語は、これからも続いていく。

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    プロフィル
    平野 和彦( ひらの・かずひこ
     2001年読売新聞大阪本社に入社。神戸総局に配属され、警察取材などを担当した。05年に運動部へ移り、プロ野球の巨人やサッカー日本代表などを取材。14年から主に陸上競技をカバーし、昨夏のリオデジャネイロ五輪は現地で取材にあたった。
    2017年10月03日 07時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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