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    教育

    教師の働き方改革が進まない学校の「世論知らず」

    名古屋大准教授 内田良


    労務管理の欠落

    • (画像はイメージ)
      (画像はイメージ)

     こうした調査を通して、教員の時間外勤務の状況は、全国規模ではようやく「見える化」してきたと言える。しかし、問題は、それぞれの学校、個々の教員単位になると、明確な形では「見える化」していないということである。

     長時間労働が問題視され、民間企業で「働き方改革」が進められている世間の常識からすると、学校現場の危機感の低さを反映しているように私には感じられる。

     連合総研が2016年12月に発表した、公立校を対象にした全国調査の報告書(『とりもどせ!教職員の「生活時間」』)に、各校の出退勤の記録方法に関する回答結果が示されている(図)。

     これによると、小学校と中学校ともに最も多かったのは、「出勤簿への捺印により行っている」(小学校29.9%、中学校30.8%)だった。次いで、「把握しているかどうかわからない」、3番目に「出・退勤時刻の把握は行っていない」が続いた。これに対し、「タイムカードやPC等の機器により行っている」は1割(小学校10.0%、中学校11.0%)にとどまっている。

     出退勤の時刻を、客観的方法で記録し、確認できるようにしようという空気の希薄さが、よく伝わってくる調査結果である。

     個々の学校現場には、そもそも勤務時間をしっかりと管理する文化が存在しない。

     外界から隔離された学校のこの独特の文化は、無制限の時間外勤務を容易に許す土壌を形成している。

    • 小学校・中学校における出退勤時間の把握方法(連合総研の報告書より筆者が作図)
      小学校・中学校における出退勤時間の把握方法(連合総研の報告書より筆者が作図)

    勤務時間の上限規制に向けて

     文部科学省の中央教育審議会が8月、「学校における働き方改革に係る緊急提言」を発表した。

     その提言の要は、「労務管理」の徹底である。提言によると、「ICT(情報通信技術)やタイムカードなどで勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムが直ちに構築されるよう努めること」が打ち出されている。

     今年5月、私は「教職員の働き方改革推進プロジェクト」の一人として、「教職員の時間外労働にも上限規制を設けて下さい!」という署名活動に着手した。

     ここでいう「上限規制」には、単に上限を設けること以上の重要な意図を込めている。

     上限規制を設けるということは、まず、教員の勤務時間を把握するということを学校現場に求めている。すなわち、上限規制とは「労務管理」の言い換えである。

     「1か月の勤務時間を初めて数えました。過労死ライン超えています」

     先日、ある教員がツイッターで、こんなことをつぶやいていた。

     教員の働き方改革は、決して難解なものではない。まず、勤務時間を数え上げるところから、その第一歩が始まる。

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    プロフィル
    内田 良( うちだ・りょう
     福井市出身。名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。専門は教育社会学。博士(教育学)。1998年、名古屋大学経済学部卒業。2003年、同大学院教育発達科学研究科博士課程単位取得満期退学。主な著書に「柔道事故」(河出書房新社)、「教育という病 子どもと先生を苦しめる『教育リスク』」(光文社新書)、「ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う」(東洋館出版社)。インターネットサイト「 学校リスク研究所 」を主宰する。ツイッターはこちら( 内田良/学校リスク研究所 )。


    2017年10月05日 07時15分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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