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    社会

    「園児の声うるさい」…保育園は“迷惑施設”か

    大正大学人間学部教授 白土健

    壁で覆われる保育施設

    • 園庭に防音壁が設置された保育園(東京都練馬区で)
      園庭に防音壁が設置された保育園(東京都練馬区で)

     そんな中、国や自治体は近隣住民の苦情や不安を減らし、保育施設の開設促進に結びつけようと、様々な対策を講じている。

     東京都は2015年、環境確保条例を改正し、就学前の子どもの声などを数値規制の対象から除外した。子どもの健やかな成長や育成に配慮するため、子どもの声が騒音とみなされないようにしたのだ。

     厚生労働省は、2016年に保育施設などの周囲に防音壁を設置するための補助金制度を導入した。大阪府では、「子ども施設と地域との共生に向けて―子ども施設環境配慮手引書―」と題する近隣対策のための小冊子を配布し、音の感じ方に関する基礎知識や関連する法令、トラブル対策、施設建設の際の設計面のアドバイスなどを盛り込んだ。

     実際、保育施設を住宅地に立地する際には、二重の窓ガラスや防音壁を設置するなどの対策を講じるところが増えている。既存の施設でも、「子どもの姿を見たくない」という苦情を受けてカーテンで目隠しをしたり、子どもたちが園庭で遊ぶ時間を制限したり、周辺住民との間で「大声を出さない」「楽器は使わない」などの取り決めを行ったなどの例がある。いわば保育施設を「壁」で覆い、地域の目や耳から遮断しようしているのだ。しかし、それでも住民の理解はなかなか得られない。だから、保育施設の開設は難しいのである。

    うるさいと感じるのは誰か

     では、住民の理解を得るにはどうしたらよいかを考えてみよう。その前に、まず検討したいのは子どもの声を「騒音である」と感じるのは誰か――という問題だ。

     厚生労働省が行った「人口減少社会に関する意識調査」(2015年10月公表)を見てみよう。住宅地に立地する保育施設について、「子どもの声は騒音」と感じ、近隣住民の苦情や立地反対などの考え方に同感すると答えた人は35.11%にも上った。性別では男性よりも女性が多く、性別・世代別では40~49歳女性の49.8%、30~39歳女性の39.1%が特に目立った。男性では15~29歳の若い世代が38.9%と高く、最も低かったのは60~79歳男性の21.9%だった。

     当然のことながら、音の感じ方には個人差があるので、上記の調査結果だけを過大視するべきではないだろう。同じ音でも、その時の気分や体調によって異なった感じ方をすることがある。また、保育施設が利用されるのは主に昼間の時間帯であることから、その時間帯は仕事先にいることが多い性別・世代(30歳以上の男性など)は数字が低くなることも考えられる。

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    2017年10月04日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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