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    経済

    荒川・足立の逆襲!ニコタマの悲哀?

    不動産コンサルタント 長嶋修
     9月に発表された2017年基準地価で、住宅地で大きな伸びを示したのが、荒川区や北区、足立区など東京・北東部の「下町」だった。上昇率トップ10に5地点がランクインした。都心部では千代田区三番町が3位、中央区佃1丁目が8位に入ったのに対し、北東部は、荒川区南千住8丁目と同区西日暮里4丁目が1位、2位を占めるなど上位を席巻した。こうした現象の背景には何があるのか。不動産コンサルタントの長嶋修氏が解説する。

    基準地価、住宅地は下落縮小

     17年の基準地価は、全国の商業地は昨年の横ばいから上昇に転じ、工業地は昨年の下落から横ばい。住宅地は下落幅の縮小傾向が続くという結果でした。

     東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏を見ると、商業地は総じて上昇基調です。住宅地は東京圏・大阪圏で伸び続け、工業地も名古屋圏を除き上昇基調が強くなっています。

     さらに、地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)では全用途で三大都市圏を上回る上昇を示しています。その他の地域でも、全用途で下落幅が縮小しています。

    東京では荒川区や足立区が「健闘」

    • 東京23区で地価上昇率トップの地点に近いJR南千住駅(東京都荒川区)
      東京23区で地価上昇率トップの地点に近いJR南千住駅(東京都荒川区)

     では、東京23区を見てみましょう。昨年は千代田区、港区などの都心部が上昇率の上位を占めていました。しかし、今回大きく伸びたのは、なんと荒川区など東京・北東部でした。

     東京23区内で住宅地の上昇率トップはプラス6.3%の荒川区南千住8丁目、続いて荒川区西日暮里4丁目(6.1%)が同2位、その他にも北区、足立区などが上位を占める構図です。

     トップの南千住は、JRの上野東京ラインが15年3月に開業したことによる、南千住駅の利便性向上が評価されたとみられます。

     元々、つくばエクスプレスや東京メトロ日比谷線なども利用できる、利便性の高いエリアだったのですが、上野東京ラインの開通で常磐線が東京駅まで乗り入れたことが、地価の上昇を底上げしたと見られます。一方、相対的に「上がりすぎ」とされていた23区南西部(目黒区、世田谷区、大田区など)から波及した地価上昇の動きがこの地域にも波及したといえるかもしれません。

     また、足立区はかつて「犯罪多発地域」のレッテルを貼られ、今でも決してイメージがいいとはいえないエリアです。しかし、地域や警察のほか、関係団体が連携し、落書きや歩きたばこなど、小さな不正や犯罪を徹底的に取り締まる「ビューティフル・ウィンドウズ運動」を続けました。その結果、ピーク時には年間1万7000件近くに上った刑法犯認知件数が、16年には年間約6500件と大幅に減少、以前よりイメージも向上し、格段に暮らしやすくなったといえるでしょう。

     ビューティフル・ウィンドウズ運動とは、割れた窓ガラスを放置することから地域全体が荒廃し、犯罪も増えてしまうという「割れ窓理論」から教訓を得て、米ニューヨーク市が軽微な犯罪を取り締まることで凶悪犯罪を抑止し、治安を回復させた例を参考に、足立区が独自で取り組んだものです。

     今年に入り、再び刑法犯認知件数が東京23区で最も多くなってしまったものの、改めて取り組みを強化しているといいます。

    • 東京都足立区の北千住駅前。大学の誘致などで活気づく。
      東京都足立区の北千住駅前。大学の誘致などで活気づく。

     また、足立区では小中学校の「給食改革」も実施。栄養や味にこだわった給食を、児童や生徒に提供するよう努めた結果、食べ残しが劇的に減ったことに加え、児童や生徒の「肥満率」がダウンして体力も向上したというデータもあり、子育て世帯には好評です。 

     さらに、区の中心・北千住地区を「文教地区」とすべく、東京電機大学など5大学を誘致しました。元々、商業施設などが立ち並ぶ地域でしたが、街に若者が行き交うようになり、商店街にも若者向けの店舗や飲食店が軒を連ねるようになるなど、(にぎ)わいを見せるようになりました。

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    2017年10月08日 07時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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