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    文化

    カズオ・イシグロがノーベル文学賞に選ばれた理由

    京都外国語短期大学教授 荘中孝之

    今後の展開への期待は?

    ――今後、イシグロ氏はどんな作品を書いていくのでしょう。

    • 書店ではイシグロ氏の作品が次々に売れた(東京都豊島区のジュンク堂書店池袋本店で)
      書店ではイシグロ氏の作品が次々に売れた(東京都豊島区のジュンク堂書店池袋本店で)

     一つは、記者会見でも「自分には日本的要素がある」とはっきり言っているので、何らかの形でしばらく離れていた日本への回帰が見られるかもしれません。もう一つは、世界的影響力のある大作家として、自分の立場をかなり自覚しているので、自分たちと同世代の作家が20世紀の負の歴史、紛争や戦争を語り継いでいかなければと語っています。そういったテーマにも取り組んでいくと思います。イシグロ氏は4~5年に1作しか書かないという「寡作」の作家なので、年齢を考えるとそれほど多くの作品を期待できないかもしれませんが、残りのいくつかの作品から大作が出ることを期待しています。


    ――一番好きな作品はなんですか。

     非常に難しいのですが、一般的には『日の名残り』や『わたしを離さないで』だと言われていますね。完成度も高く、読みやすく面白い。一方で『充たされざる者』のようなすごいタイプの作品もある。故郷の長崎を舞台にしたデビュー作の『遠い山なみの光』はイシグロ氏のいろいろな要素が垣間見えますね。初めて読む人は『日の名残り』や『わたしを離さないで』から入り、そこから面白いと思ったらいろいろと読んでほしい。短編集『夜想曲集』もとっつきやすくて面白いと思います。


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    プロフィル
    荘中 孝之(しょうなか・たかゆき)
     京都外国語短期大学教授。1968年、兵庫県生まれ。専門は英文学、比較文学。英バーミンガム大学大学院修士課程、大阪大学大学院文学研究科博士課程修了。著書に『カズオ・イシグロ―〈日本〉と〈イギリス〉の間から』、編著に『アジア系アメリカ文学を学ぶ人のために』など。

    2017年10月06日 17時42分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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