
突然、夫に余命宣告…その時、妻は?
テレビドラマ「サインはV」でデビューし、司会・リポーターとしても活躍した女優の岸ユキさんは、夫が突然、余命1か月と宣告され、尊厳死に立ち会った経験を持つ。岸さんは夫の死を乗り越え、現在は二科会会友としてアトリエで絵の制作に励むなど活動的な日々を送っている。私は父の死をきっかけに、身近な人を亡くしたらどうなるのかを、 【臨終から葬儀編】 【相続編】 で記してきた。一連の手続きが終わると、遺された母が心配になった。同じく夫に先立たれた岸さんは、生前に築いた夫との信頼関係や遺言書にあった自分宛てのメッセージなどが励みになったことを教えてくれた。(聞き手 読売新聞メディア編集部 河合良昭)
――突然の余命宣告だったようですが。
夫の
最初に異変があったのは2013年夏。夫はお酒が好きで毎日、晩酌していましたが、「酒をおいしく感じない」と言って飲まなくなりました。その後、体調が思わしくない日々が続き、2014年1月、「胃が痛くて眠れなかった」と訴える日がありました。普段は弱音を吐かない人でしたので、病院に連れて行きました。痛み止めをもらいましたが効かず、精密な検査をしてもらうと胃がんであることがわかりました。すでに手術できる状態ではなく、余命1か月と宣告されました。夫は「自然に任せるから」と(積極的な治療をしない)尊厳死を選択しました。
――その後の生活はどうだったのですか。
自宅での緩和ケアになりました。痛み止めの薬は素晴らしく、病気を忘れてしまうくらいでした。東京・渋谷にある西野バレエ団にも通って仕事もして、「おいしいものを食べたい」と歯医者にも通っていました。
亡くなる1週間前に「体がしんどい」と言って仕事に行けなくなりました。介護用のベッドの上で寝る生活となり、私は千葉のアトリエに行くのをやめ、絵を描くのは自宅の2階にして、何かあったらすぐに対応できるようにしました。
それでも訪問診療する医師が来る前の日には、一人で風呂に入ることができていました。そこで、これからのことを考え、「1階から2階に連絡できるベルを取り付けよう。ベッドでトイレができる用具を借りよう」と決めましたが、それらが来るはずだった日の朝、夫は容態が急変し、亡くなりました。
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