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    経済

    人手不足で選別進む「生き残る企業と社員」

    三菱総合研究所主任研究員 奥村隆一
     飲食、運送業界などの人手不足が深刻だ。営業時間の短縮や料金値上げなど、影響は多方面に及んでいる。企業側はどんな対策を考えているのか。一方、働く側は「売り手市場」の利を生かすことができるのか。三菱総合研究所主任研究員の奥村隆一さんが解説する。

    危機感強める飲食チェーン

     ファミリーレストランチェーンのすかいらーく(本社・東京都武蔵野市)は2016年12月、全国に展開する店舗の大部分で24時間営業をやめることを決定した。日本マクドナルド(同・東京都新宿区)も24時間営業の店舗を縮小している。一方、焼き鳥居酒屋チェーンの鳥貴族(同・大阪市)は今月、28年ぶりとなる全商品の値上げに踏み切った。これらの動きはいずれも「人手不足」が理由である。

     筆者が知る、ある大手飲食チェーンの人事担当者も「数年以内に店舗の維持が困難になる」と危機感を強めていた。東京商工リサーチによれば、実際に求人難を原因とする倒産が今年に入って急増しているという。

     こうした苦境は飲食業界だけに限らない。小売りや運輸など、多くの人手を必要とする労働集約型のサービス産業においては、経営規模の大小にかかわらず、人手不足が経営に甚大な影響を及ぼしつつある。

     これらが一時的な現象ではないことに、問題の根の深さがある。人材需給の状況を示す代表的な指標である「有効求人倍率」は、景気動向を示す指標の一つでもあり、通常は景気の動きと連動して推移する。ところが、ここ4~5年の間に実質経済成長率との乖離(かいり)が拡大しており、今日の人手不足の背景に「別の事情」が影響し始めたことを意味している。それは、「労働力人口減少社会」の到来だ。

     日本は2008年をピークに、人口減少社会に突入した。だが実は、それに先立つ10年前の1998年に労働力人口はすでにピークを迎えていた。以降、労働力が長期間にわたって減少を続ける社会になっていたのである。高齢者や女性の労働参加が進んでいるため、増減を繰り返しながらの緩やかな減少ではあるが、じわじわと経済活力にマイナスの影響を及ぼしてきた。

     先に挙げた労働集約型の産業は、当然ながらコスト全体に占める人件費の割合が高い。それゆえ、できるだけ安い労働力を活用しようと、パートやアルバイトなどの非正規労働に期待しがちだ。20~30年前は学生や専業主婦がその主力となったが、少子化による学生数の減少、女性の社会進出促進による専業主婦の減少などで確保が難しくなった。代わって期待を寄せられるのはシニア層で、実際に増加の一途をたどっている。

     外部から非正規労働の形で、主にシニア層を積極的に雇用して経営を成り立たせる。こうした方向性は政府がめざす「一億総活躍社会」の理念に沿っており、好ましいことのようにも見える。しかし、筆者はこうした経営方針は重大な問題を抱えていると考えている。

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    2017年10月14日 08時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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