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    文化

    漫画、ゲーム…止まらない「ゾンビ増殖」のなぜ?

    読売新聞調査研究本部主任研究員 福永聖二
     墓場からよみがえった死体、ゾンビが日本で増殖している。年々にぎわいを増す10月末のハロウィーン祭りでは、ゾンビの仮装がここ2、3年で急増。ゾンビを扱った漫画、ライトノベル、ゲームやそれらの映画化作品も続々と作られている。本来はホラー映画の主役ながら、今や「ゾンビ」という言葉自体、精気のない状態や、なくなったはずなのにいつのまにか復活しているものの比喩として普通に使われているほどだ。今年に入り、ゾンビを考察する本も相次いで出版された。なぜ今、日本でゾンビが注目されるのか。読売新聞調査研究本部の福永聖二主任研究員が「ゾンビ増殖」の謎を探る。

    「ゾンビ像」を決めたロメロ監督映画

    • ここからゾンビ映画が始まった。ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画第1作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年)。下は作品のブルーレイ・ディスク(販売元=ハピネット)
      ここからゾンビ映画が始まった。ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画第1作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年)。下は作品のブルーレイ・ディスク(販売元=ハピネット)

     一般に「ゾンビ」とは、生き返った死体のことを意味する。知性はないが自ら動き、その動作は緩慢で、ぎこちなく、人間を襲って食いつく。完全に倒すには脳を破壊するしかない。そして、ここが重要な点だが、ゾンビにかまれると、かまれた人間もまたゾンビになってしまう。

     こうして、いつの間にかゾンビはどんどん増えていく。1体、2体なら動きが遅いので何とか逃げ切ったり、倒したりできても、大量のゾンビに囲まれると、なすすべがなくなり、絶体絶命のピンチになる。それがゾンビの怖さのポイントだろう。

     こうしたゾンビの“お約束”を作りだしたのが、今年7月に亡くなった米映画監督ジョージ・A・ロメロ氏だ。今日に至るゾンビのイメージを決定づけた映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を1968年に撮り、「ゾンビ映画の父」と呼ばれる。それまでのゾンビは、中米ハイチの民間信仰であるブードゥー教の呪術師によって生み出された魂のない死体として知られ、呪術師に操られるが、自ら動いて人間を襲うようなことはなかった。人肉を求めて襲いかかり、感染し、増殖するという、ゾンビ像の定番を生み出したのが、ロメロ監督だった。

     「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は次のような内容だ。墓参りに出かけた兄妹が、ふらふらと動く見知らぬ男に襲われる。兄を殺された妹は近くの一軒家に逃げ込み、やはり避難してきた黒人青年から、死者がよみがえって生者を襲っていると知らされる。さらに、地下に潜んでいたカップルと、けがをした娘をかかえる夫婦が現れる。外では、家の中にいる人間を狙って死者がどんどん増えてくる。当時、米国は、黒人の公民権運動が盛り上がっていた時期。ゾンビ映画の嚆矢(こうし)というだけでなく、黒人青年がリーダー的役割を果たしているという点でも画期的な作品だった。

     もっとも、この作品は無名監督による白黒の自主製作映画だったため、米主要映画館ではなく、当初、ドライブイン・シアターなど小規模施設で上映された。それでも、増殖するゾンビたちの恐怖と面白さが口コミで広がり、1年以上も途切れることなくどこかで上映され、意外なヒット作となった。今でこそ「ゾンビ映画第1作」と呼ばれるが、当時はユニークなホラー映画の一つと見なされた程度で、日本でも公開されなかった。

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    2017年10月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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