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    社会

    逃げ恥と元SMAPが示した恋愛からの「逃げ」

    兵庫教育大学助教 永田夏来
     2016年にTBS系で放送されたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)』を覚えている人も多いだろう。彼氏のいないヒロインと、恋愛したことがないサラリーマンによるラブコメディーだ。この秋には、「逃げよう」という解散した元SMAPメンバーによるキャッチコピーが話題になっている。これらが示したのは恋愛などから「逃げる」という選択肢だ。こうした動きは若者が恋愛から「逃げる」背景となっているのか。家族社会学者の永田夏来さんが考察する。

    「呪いから逃げなさい」

    • 写真はイメージです
      写真はイメージです

     『逃げ恥』の余波が続いている。

     このドラマは、新垣結衣が演じる「職ナシ」「彼ナシ」「居場所ナシ」の主人公・森山みくりと、星野源が演じる「恋愛経験ナシ」のサラリーマン・津崎平匡が織りなすラブコメディーで高視聴率をマークし、昨年末、大きな話題となった。

     逃げ恥はエンディングの「恋ダンス」や、なかなか進まない二人の関係にムズムズしつつもキュンとなってしまう「ムズキュン」などの新しいトレンドワードも生み出した。

     最初は、恋愛感情抜きで「契約結婚」をしたはずの二人。距離が縮まりそうで縮まらない関係に、日本中の視聴者が「一喜一憂」したのも記憶に新しい。

     中でも、石田ゆり子が演じるみくりの伯母・百合の

     「わたしたちの周りにはね、たくさんの呪いがあるの。自分に呪いをかけないで、そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」

     という台詞(せりふ)は若者たちの大きな共感を呼び、心の支えになったといわれる。

     今、この「逃げる」というキーワードは、世の中で「力」を持ち始めているようだ。

     元SMAPの香取慎吾、稲垣吾郎、草なぎ(※)剛らによって、今年9月に開設された公式ファンサイト『新しい地図』では

     「逃げよう。自分を縛り付けるものから」

     とのキャッチコピーが示され、時代を鋭く切り取った言葉として大きな関心を集めている。(※「なぎ」は「弓」へんに「剪」)

     かつて批評家の浅田彰が、著書「逃走論―スキゾ・キッズの冒険」(1984年、筑摩書房刊)で、「地域や仕事、家族などから若者が『逃げる』時代が到来しつつある」と指摘した。三十数年の時を経て、浅田の指摘は現実となった。若者が恋愛から「逃げる」状況とはどのようなものなのか。

    2017年10月17日 07時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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