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    社会

    あなたも「あのドライバー」のようになるかも

    実践女子大学教授 松浦常夫
     東名高速道路上でワゴン車の一家4人らが死傷した事故で、別の車で走行を妨害したとして、建設作業員の男が自動車運転死傷行為処罰法違反の疑いで逮捕された。男はパーキングエリアで注意されたことを逆恨みし、常軌を逸した行為に及んだという。運転時にささいなことで腹を立て、攻撃的になる人は決して珍しくない。ドライバーが陥りやすい心理状態について、交通心理学が専門の松浦常夫・実践女子大学教授に解説してもらった。(聞き手・読売新聞メディア局編集部 久保田稔)

    ふだんは穏やかな人でも……

     東名高速道路で起きた事件は、その後、被疑者が以前にも運転時に粗暴な行為を繰り返していたことなどが報じられ、運転をめぐるトラブルというよりも、「(特異な)犯罪」の側面が強くなってきた。

     とはいえ、運転中のささいなトラブルが元でエキサイトし、他の運転者や歩行者を威嚇したり、危害を加えたりする行為自体はよく見られるものだ。米国では「ロードレイジ(怒り)」と呼ばれ、殺人に至るケースも年に数件ある。

     ふだんは穏やかな印象の人が運転中に突然、感情をあらわにするのを指して「ハンドルを握ると人が変わる」などと言うが、人とは本来、状況に応じてふるまい方を変えるものだ。つまり、車の運転という状況が、誰にとっても、怒りを抑制せずにストレートに表すふるまいにつながりやすいと考えることができるのだ。

    怒りの感情を生む四つの原因

     運転時に怒りの感情を生じやすくし、また、それを抑えにくくする原因とは何か。四つ指摘したい。

     一つ目は、「個室」という状況だ。車の中は周囲と隔絶し、ドライバーは自分の部屋にいるような錯覚に陥りやすい。部屋の中で気兼ねなく、好きなようにふるまうのに似て、運転中は自分の好きなペースで走ることを望みがちだ。直前をゆっくり走っている車や、目の前に車線変更して来た車に「邪魔された」などと考え、怒りを覚えやすいのはそのためだと考えられる。道そのものが周囲から隔絶している高速道路上は、二重の意味で個室的だと言える。

     二つ目は、「匿名性」だ。車の運転時は、ドライバーが「どこのだれか」を周囲の人が特定することは(一部の商用車や特殊車両を除き)難しい。人はそうした状況では好き勝手にふるまう傾向があり、感情の自制は期待しにくい。歩行者に対して、威嚇するように不必要なクラクションを鳴らすなどの行為は、この「誰がやっているかわからない」ことが強く影響していると思う。

     三つ目は、生理的な要因だ。高速運転時など日常生活にないスピードを体感する場面では、人は興奮したり緊張したりして心拍数が上がる。他の車が乱暴に運転していたり、渋滞などに巻き込まれたりすると、ストレスは一層増す。そうした状況では感情的になりやすく、ちょっとしたことでフラストレーションをため込んでしまう傾向がある。

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    2017年10月16日 18時10分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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