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    国際

    テロ支援国再指定に反発、ミサイル完成急ぐ北朝鮮

    宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄
     北朝鮮が29日未明、弾道ミサイル1発を発射した。ミサイルは最高高度が過去最高となる4000キロ・メートル超と推定され、青森県西方の日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下した。北朝鮮の朝鮮中央テレビは「新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』の試験発射に成功した」との重大報道を行った。北朝鮮がこの時期にミサイルを発射した狙いと、最近、日本海沿岸に相次いで北朝鮮の漁船が漂着している背景について、宮塚コリア研究所の宮塚利雄代表に聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    • 29日、「重大報道」でミサイル発射を伝える朝鮮中央テレビのアナウンサー。朝鮮中央テレビの画面から=ロイター
      29日、「重大報道」でミサイル発射を伝える朝鮮中央テレビのアナウンサー。朝鮮中央テレビの画面から=ロイター

    ――北朝鮮が2か月半の沈黙の後、弾道ミサイルを発射した。今回の狙いは何か。

     米トランプ政権が今月20日、北朝鮮をテロ支援国家に再指定したことへの抵抗の意思表示であることがひとつ。もう一つは、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は今年1月1日の「新年の辞」でICBMの技術完成に意欲を見せたことだ。12月になれば、天候などの条件にも左右されやすい。ここで打ち上げておかないと、「何だ、口だけか」ということになりかねないので、発射したというのだろう。

     ただ、日本の上空を超えると米国からの強い反発も考えられるので、ロフテッド軌道で打ち上げ、日本のEEZ内に落とした。日本はいつでも狙うことができるので、日本を威嚇したというよりも、今回は米国のテロ支援国家再指定に対する抵抗だ。

    ――最近、中国から北朝鮮に派遣された特使が金正恩委員長に会えなかった。ミサイル・核開発を快く思わない中国に、北朝鮮は不満を抱いているのではないか。

     不満を抱いていることは事実だろうが、どの程度なのか。中朝国境の橋が一時的に閉鎖されたが、石油パイプラインまで止められたわけではない。北朝鮮なりに不満の意思は示すことはあっても、決定的な対立までは望んではいないだろう。

    ――最近、日本海沿岸に北朝鮮のイカ釣り漁船と見られる木造船が相次いで漂着している。北朝鮮国内では食糧事情が悪化しているのか。

     イカなどの魚介類を食べただけでは腹いっぱいにはならない。北朝鮮ではまず穀物などの主食が十分足りていないところが問題だが、その上で動物性たんぱく質もとらないと栄養状態も解決しない。たんぱく質が豊富なイカは保存もきき、北朝鮮では副食として重要な位置を占めている。

     北朝鮮でにぎやかな場所は三つある。ひとつは市場、二つめはサーカス。ピエロが出てきて韓国などを風刺するとみんながゲラゲラ笑う。三つめはイカの漁船が集結する港だ。漁師はイカを捕ってくれば、港で行商のおばさんたちに売り、個人的な収入にもなる。

     漁船は軍の管轄で漁師は往復分の燃料を渡されるが、燃料やエンジンは中国製の粗悪なものだ。好漁場である日本海中部の大和堆(やまとたい)まで無理して出かければ、故障するのも当然。これからも漂流する船は増えるのではないか。

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    プロフィル
    宮塚 利雄(みやつか・としお)
    宮塚コリア研究所代表。元山梨学院大学教授。1976年に韓国・慶煕大学校大学院経済学科  碩士 ( せきし ) 課程(日本の修士課程に相当)修了。80年、檀国大学校大学院経済学科博士課程単位取得。様々な日用品や生活資料から北朝鮮の実情を探るという研究を続けてきた。2013年、川崎市に宮塚コリア研究所を開設。主な著書に『北朝鮮・驚愕の教科書』(娘の寿美子さんとの共著、文藝春秋)など。

    2017年11月29日 16時02分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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