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    国際

    漂流ドイツ、しのび寄る「ワイマールの亡霊」

    在独ジャーナリスト 熊谷徹
     欧州の中心に位置する経済大国ドイツが、漂流している。11月19日にキリスト教民主同盟(CDU)、社会同盟(CSU)、自由民主党(FDP)、緑の党が進めていた連立交渉が決裂したためだ。連邦議会選挙から約3か月たっても連邦政府の骨格すら見えない。安定を誇ってきたドイツの混乱に、周辺国の間で当惑が強まっている。ドイツで今、何が起きているのか。在独ジャーナリストの熊谷徹さんがリポートする。

    メルケル氏の誤算

    • 連立協議の決裂を受け、報道陣に状況を説明するメルケル首相(11月20日未明、ロイター)
      連立協議の決裂を受け、報道陣に状況を説明するメルケル首相(11月20日未明、ロイター)

     連立交渉が決裂したのは、企業寄りの中道保守政党FDPが、「メルケル氏はエネルギー政策や税制問題で緑の党の肩を持ちすぎる。連立協定書は、緑の党の筆跡が濃すぎる」と判断して、交渉の席を立ったからだ。FDPは2013年の連邦議会選挙で得票率が5%を割り込んだために、議会から締め出されていたが、38歳のリントナー党首がメルケル政権との対立姿勢を前面に押し出すことによって、議会にカムバックを果たした。FDPとしては、政権に参加するために自党の主張を曲げたと見られれば、再び支持者を失う可能性があり、野党にとどまる道を選んだ。

     メルケル氏は「FDPは政権に参加するために妥協するだろう」と考えて、ドイツで一度も例がない4党による連立交渉を開始したわけだが、この見通し自体が甘かった。

     私はドイツに27年間住んでおり、これまで多くの選挙を観察してきたが、今回の選挙ほど大政党が右往左往するのを見たことはない。

     メルケル氏をはじめとする大政党の幹部たちは、連立交渉の決裂後、「CDU・CSUによる少数与党政権よりは、再選挙を望む」と発言していた。

     また、議会第2党である社会民主党(SPD)のシュルツ党首は、交渉決裂直後に「SPDは政権に加わるつもりはない」と発言した。9月24日の連邦議会選の前、SPDは大連立政権の一翼を担っていたが、選挙で同党の得票率が約20%という史上最低の水準に落ち込んだことから、政権には加わらず、野党に戻ることを宣言していた。

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    2017年12月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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