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    国際

    ロヒンギャ問題に道筋、バングラデシュの成長戦略

    住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
     昨年、ミャンマーでの迫害を恐れ、国外に逃れたロヒンギャ避難民が国際的な人道問題として大きく取り上げられた。人道危機を生んだミャンマー国軍と同国政府の対応に非難が集中したが、その一方で、70万人にも上る避難民を受け入れた隣国バングラデシュにはあまり注目が集まっていない。バングラデシュと言えば、2016年に首都ダッカで日本人7人が犠牲になったテロ事件が記憶に刻まれているが、その国が今、転機を迎えているという。バングラ最新事情を住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんに解説してもらった。

    ロヒンギャ問題に冷静な対応

    • ロヒンギャの人たちが身を寄せるバングラデシュ南部のコックスバザール(ロイター)
      ロヒンギャの人たちが身を寄せるバングラデシュ南部のコックスバザール(ロイター)

     ロヒンギャはミャンマー西部ラカイン州に住むイスラム教徒を指すが、ミャンマー政府は「ロヒンギャ」という民族の存在を認めておらず、国籍も与えていない。ラカイン州では、かねてから多数派を占める仏教徒とロヒンギャの対立が続いていた。

     昨年8月、「アラカン・ロヒンギャ救世軍」と名乗る武装組織がラカイン州にあるミャンマー軍や警察の施設を襲撃し、治安部隊との間で衝突が発生した。ミャンマー国軍は大規模な掃討作戦に乗り出し、ロヒンギャ居住地域から多くの住民がバングラデシュに流出した。

     放火や殺人、暴行など国軍による組織的な残虐行為の疑いが指摘され、国連のザイド人権高等弁務官は「民族浄化」が行われていると糾弾した。一方、ミャンマー政府は国軍の組織的な関与を認めず、同国の実質的な最高指導者であり、ノーベル平和賞受賞者であるアウン・サン・スー・チー国家顧問も国際社会から厳しく非難された。バングラデシュに逃れたロヒンギャ避難民は70万人に上り、衝突以前から流入していた30万人と合わせて100万人がバングラデシュで暮らしている。

     ミャンマーに比べると受け入れ側のバングラデシュに関する報道はそれほど多くない。しかし、その陰で同国政府は冷静な対応を見せていた。流入するロヒンギャを追い返さず、国際社会の支援を得ながら避難民キャンプに居住させた。同時に、ミャンマー政府を正面から非難することなく交渉を続け、昨年11月には避難民帰還の合意を成立させた。一連の粘り強い対応は国際社会からも高く評価されている。

     そのバングラデシュが、今、転機を迎えている。

    2018年02月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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