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    文化

    ベラスケスが一挙7点 プラド展の「舞台裏」を見る

    読売新聞調査研究本部主任研究員 大内佐紀
     世界屈指の美の殿堂、プラド美術館(在スペイン・マドリード)所蔵の絵画約70点を紹介する「プラド美術館展」が2月24日、東京・上野の国立西洋美術館で開幕した。今回は、巨匠ディエゴ・ベラスケス(1599~1660年)の傑作が一挙に7点、公開されている。日本で開かれた展覧会では最多の数だ。この華やかな展覧会を開催するまでには、どのような準備作業があったのだろうか。舞台裏をのぞくと同時に、見どころを探った。

    絵画修復士の鋭い目

    • ベラスケス「東方三博士の礼拝」
      ベラスケス「東方三博士の礼拝」

     世紀の美術展の開幕を約1週間後に控えた2月16日。人影もまばらな国立西洋美術館内に、「ほーっ」という長いため息が一斉に漏れた。

     温度と湿度を厳重に管理する特殊な巨大梱包(こんぽう)から取り出された1枚の絵画がテーブルの上に慎重に置かれた。縦203センチ、横125センチの大作をくるんでいたクッション材がはがされていく。「東方三博士の礼拝」(1619年)が姿を現した瞬間だ。

     「今回、日本にやってきたベラスケス第1号の“お目見え”よ」

     声の主は、プラド美術館から絵画と一緒に来日した絵画修復士マリアルイサ・ペレス・ロドリゲスさん。他のスタッフとともに絵画を取り囲み、小型ライトで光を当てながら、ルーペを使って丹念に絵の状態を確認する。絵の具の剥落がないか、輸送中に傷が付いていないかなどを目視しているのだ。万が一、問題があれば、ペレス・ロドリゲスさんらがそれを記録し、可及的速やかに修復を施す手はずになっている。

     半時間ほどかけた後、絵の状態に満足したのか、ペレス・ロドリゲスさんの鋭かった目が柔和な笑みに変わり、傍らで見守っていた主催者の一角、読売新聞社の担当者を手招きした。ライトの光を、聖母マリアの衣服部分に再び当てながら、「ね? このいきいきとしたタッチが17世紀からあったなんて、何回見ても、すごいわね」と話しかけた。ベラスケスは色彩の「染み」によって絵画に生命を吹き込むという独創的な様式を発展させたが、それが顕著に表われている部分だという。

     それぞれの絵を展示する場所は、事前に西洋美術館とプラド側との間で合意されている。「東方三博士の礼拝」がかけられるはずの壁の前で、西洋美術館の川瀬佑介・主任学芸員が、これまた鋭い目を絵に向けながら「もうちょっと上」「左肩を少し下げて」と美術品展示専門スタッフに細かく指示を飛ばす。

     今回の展覧会の監修者で、プラド美術館のハビエル・ポルトゥス・スペイン絵画部長が「ムイ・ビエン(とてもいいね)」とにっこりした時には、絵が梱包から出されてから軽く1時間はたっていた。このように数日間をかけ、同じような作業がすべての絵に繰り返される。

    2018年02月27日 14時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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