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    国際

    朝鮮半島、「宴のあと」に始まる駆け引き

    龍谷大学教授 李相哲
     「平和の祭典」である五輪の機会を利用して、北朝鮮は韓国や米国に対話を呼びかけた。 平昌 ( ピョンチャン ) 五輪は終わったが、朝鮮半島情勢を巡る駆け引きはこれからが本番だ。国際社会の包囲網に風穴を開けたい北朝鮮、南北首脳会談を実現して得点につなげたい 文在 ( ムンジェイン ) 寅大統領が率いる韓国、北朝鮮に圧力をかけ続けて核・ミサイルの放棄を迫りたい米国と、三者三様の思惑が渦巻く。今後の展開を読む上で押さえるべきポイントを龍谷大学の李相哲教授に聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    制裁が効果、焦燥感強める北朝鮮

    • 韓国大統領府での会談に先立ち、北朝鮮の金与正氏と握手を交わす韓国の文在寅大統領(2月10日)=聨合AP
      韓国大統領府での会談に先立ち、北朝鮮の金与正氏と握手を交わす韓国の文在寅大統領(2月10日)=聨合AP

     ――北朝鮮は平昌五輪の開会式に金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の実妹である金与正(ヨジョン)党中央委員会第1副部長、閉会式に金英哲(ヨンチョル)党副委員長(統一戦線部長)という“重量級”の人たちを出席させました。これをどう見ますか。

     「北朝鮮に対する制裁が効いているのでしょう。開会式に身重の妹・金与正氏、閉会式に金英哲氏を送り込んだのは、金正恩委員長の切羽詰まった気持ちを表すものだと思います。米国による先制攻撃の恐怖を感じている上、資金も枯渇しつつある。閉塞感に駆られ、何とかしないといけないという焦燥感の表れではないでしょうか。

     韓国と話し合いを進めるふりをして、実のところ、米国に秋波を送っています。米国との対話の糸口をつかみたいのだと思います」

     ――金与正氏は文在寅大統領との会談で、南北首脳会談を提案しました。北朝鮮は韓国に何を求めているのですか。

     「過去の南北首脳会談では、北朝鮮は韓国に“前金”を要求しました。金大中(デジュン)大統領の時には、現代グループを通じて4億5000万ドルが北朝鮮に送金されました。そのことは韓国の捜査機関の捜査で明らかになっています。

     盧武鉉(ノムヒョン)大統領時代の2007年、アフガニスタンで韓国人23人がイスラム原理主義組織タリバンに誘拐されるという事件がありました。この時、タリバン側は2000万ドルの身代金を要求したのですが、韓国側の交渉窓口だった国家情報院は3000万ドルを国庫から下ろし、2000万ドルをタリバンに支払ったのですが、残り1000万ドルを返納しませんでした。この1000万ドルが北朝鮮の金正日(ジョンイル)政権に渡ったという証言があります。

     このほか、盧大統領は開城(ケソン)工業団地の拡大などインフラ整備も約束しました。盧氏は『政権が代わっても約束を守らなければならない』と言っていたので、その延長線上で考えると、北朝鮮は盧政権時代に大統領秘書室長だった文大統領が約束を履行してくれるのではないかと期待を持っているはずです。

     北朝鮮は今すぐ韓国からお金を引き出すのは無理としても、対話ムードを作って期待を高め、経済支援を得る糸口を探りたいと考えていると思います。文大統領なら国際社会の意向と関係なく、何らかの支援をしてくれるはずという希望もあるでしょう」

    2018年03月01日 12時39分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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