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    医療

    脱・薬漬け 「投薬せず」が病院収入に

    読売新聞調査研究本部主任研究員 田中秀一
     風邪をひいて医師にかかると、抗生物質が処方されるケースが少なくない。だが実際は、風邪のほとんどに抗生物質が効かない事実をご存じだろうか? このため、政府は4月に行う診療報酬改定で、異例とも言える新たな取り組みをスタートさせる。長年にわたって問題視されてきた「薬漬け」とも言われる無用な投薬は減らせるのだろうか。

    「使いすぎ」が大問題の抗生物質

    • 「使いすぎ」が大きな問題となっている抗生物質(※写真はイメージ)
      「使いすぎ」が大きな問題となっている抗生物質(※写真はイメージ)

     抗生物質は、細菌を殺す効果があり、感染症の治療に広く使われている。青カビから作られたペニシリンに始まり、現在は化学合成された薬が多数あり、「抗菌薬」とも呼ばれる。

     普段の診療現場で抗生物質は、風邪にも多用されている。医院などを受診した際、「風邪ですね。抗生物質を出しておきましょう」と言われた経験のある人も多いに違いない。だが、風邪の約9割は、細菌とは異なるウイルスの感染が原因なので、抗生物質が効かない。風邪が治るどころか、下痢、嘔吐(おうと)などの副作用に悩まされる恐れもある。

     医師たちもこうした事実は知っている。それでも抗生物質を出すのは、風邪をこじらせて肺炎などになる二次感染を「念のために」防ごうという考え方からだ。ただ最近では、抗生物質に二次感染の予防効果がないことも、様々な研究で明らかになっている。

     いや、風邪の治療や肺炎の予防に効果がないどころか、抗生物質の不適切な使用はより大きな問題をはらんでいる。

     抗生物質の使いすぎが問題なのは、薬が効かない薬剤耐性菌が増えるからだ。耐性菌はふだん健康な人には悪さをしないが、病気で入院中など体力や免疫力が落ちた人にとっては脅威となる。治療は困難で、耐性菌の院内感染で患者が死亡するケースは後を絶たない。米国では年間約2万3000人、英国でも同約5000人が耐性菌によって死亡しているとされ、日本でも同様に多数の人が命を落としているとみられている。このまま対策をとらないと、2050年に世界で1000万人が耐性菌によって死亡する――との推計もある。16年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも、この問題が取り上げられた。

     こうした事態を前に日本の厚生労働省も、抗生物質の使用量を20年までに3分の1減らす目標を掲げている。このこと自体が、抗生物質の不適切な使用が横行していることの表れとも言えるだろう。

    2018年03月16日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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