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    国際

    「チャーチルの密約」も…英国公文書はここがスゴイ

    在英ジャーナリスト 小林恭子
     森友学園への国有地売却をめぐる問題が国会を騒がせている。焦点は、公文書書き換えの背景だが、海外で公文書はどのように位置づけられているのだろうか。公文書管理の長い歴史を持つ英国に住み、「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)を出版したジャーナリスト・小林恭子氏が、日本と英国の徹底比較を試みた。

    英ソ首脳の直筆…歴史的「密約」文書に触れた!

    • 英国国立公文書館(筆者撮影)
      英国国立公文書館(筆者撮影)

     英国は、公文書管理に熱心な国の一つだ。筆者が見るところ、英国の政治家や官僚は公文書を歴史的な文書として捉え、できうる限りの情報を残すように力を傾けている。他の国が知らない情報を持つことの強みを、知っているからかもしれない。

     ある情報が自国では見つからないのに、英国で見つかるという例は珍しくない。九州大学附属図書館記録資料館の三輪宗弘教授によれば、例えばトルコの研究者が自国では見つからない外交文書を、英国の公文書館で見つけるケースがあるという。

     政治家としての自分の一挙一動を歴史的文脈で捉えた一人が、第2次世界大戦時の英国の首相、チャーチルだ。戦争末期の1944年10月、チャーチルは戦後の欧州分割案を交渉するためモスクワを訪れ、スターリン・ソ連書記長と会談する。バルカン半島を英国とソ連で分割する案を小さな紙切れに手書きで書き、これにスターリンが青鉛筆で「よし」という意味の印をつけた。何百万もの人の運命を決めたこの紙切れが、英公文書館に今も残っている。

    • ロンドンに立つチャーチル像
      ロンドンに立つチャーチル像

     身分証明書を持って公文書館を訪れ、読者カードを作ってもらった筆者は、早速、この文書の閲覧申請をした。ファイルの中に収められていたこの紙切れを手にして、あ然とした。七十数年前にチャーチルとスターリンが交わした密約の歴史的文書がこれなのである。こんなに重要な文書を素手で触れることができるのが、英公文書館の醍醐(だいご)味だ。

     時代を遡り、1880年代にロンドン市民を震撼(しんかん)させた、連続婦女殺害事件で犯人とされた「切り裂きジャック」から届いた手紙、世界初の切手「ペニー・ブラック」のオリジナル、第2次大戦中に二重スパイとなった人物にお金を渡した、謎の日本人の写真…。英公文書館には興味深い歴史の一コマを示す公文書が多数眠っている。

    2018年04月02日 10時35分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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