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    国際

    「非核化」巡りすれ違い、米朝首脳会談に漂う暗雲

    龍谷大学教授 李相哲
     5月末までに行われる予定の米朝首脳会談を前に、関係各国の思惑の違いが浮き彫りになっている。焦点である「非核化」の意味や実現方法を巡っても溝があるようだ。今月27日には韓国の 文在寅 ( ムンジェイン ) 大統領と北朝鮮の 金正恩 ( キムジョンウン ) 朝鮮労働党委員長による南北首脳会談が開かれるが、米朝首脳会談への道筋は見えてこない。今後の展開をどう読むか。龍谷大学の李相哲教授に聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    北朝鮮が考える「非核化」とは

    • 中国の習近平国家主席との会談に臨む北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央)。3月28日、朝鮮中央通信によって配信された写真(ロイター)
      中国の習近平国家主席との会談に臨む北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央)。3月28日、朝鮮中央通信によって配信された写真(ロイター)

    ――先月26日に北京で行われた中朝首脳会談で、金正恩氏は「非核化の意思」を示したと中国側が報道した。正恩氏が考える「非核化」とは。

     「金正恩氏が言う『非核化』は、『朝鮮半島の非核化』だ。北朝鮮は金日成(キムイルソン)主席の時代から『朝鮮半島の非核化』を主張してきた。我々に核を持たせないつもりなら、韓国も核をなくしなさいという意味だ。

     北朝鮮は、米国が韓国に提供する核の傘(有事の際、核兵器で韓国を守る)が存在し、在韓米軍が持ち込む核兵器を搭載できる潜水艦、原子力空母の接近が可能な限り、非核化とは認めない態度をとっている。

     そのような懸念を一気に解消する方法は、韓国に駐留する米軍を撤収することだ。北朝鮮は、在韓米軍の撤収を外交目標の最優先事項に挙げてきた。元北朝鮮外交官の高英煥(コヨンファン)氏によれば、北朝鮮外務省内の目立つ壁には金日成主席の語録が貼られていて、そこには『外交部(外務省)の第一の任務は南朝鮮(韓国)に駐留する米軍を撤収させ、(我が国の)対外関係に有利な環境を作ることだ」と書かれているという。

     朝鮮半島を非核化するには、現在の休戦協定を平和協定に変える必要がある。手続きとしては、まず終戦を宣言するのかもしれないが、文大統領はすでに南北首脳会談で終戦宣言をしたいと意欲を見せている。米国が終戦宣言に同意すれば、平和協定、米軍撤収に向けた話し合いも現実味を帯びる。

     金正恩氏が中朝首脳会談で言った『韓国と米国が善意をもって我々の努力に応じ、段階的で同時並行的な措置を取るならば』というのは、今述べたような一連の措置を米国と韓国が実行するならば、という意味だろう。

     その代わりに北朝鮮がどうするかが注目されるが、核施設を凍結するレベルだ。北朝鮮は核保有を宣言しているので、いずれ米国と核軍縮会談をしたいと言い出すはずだ。

     北朝鮮は2016年7月、『韓国にある米軍基地を査察したい』と主張した。朝鮮半島地域の非核化のためには、日本やグアムにある米軍施設の査察も必要との立場で、そこに核がないことが確認されれば、北朝鮮も核を一部捨ててもよいというのが、彼らの考えだ。

     結論から言えば、米韓が譲歩したとしても、核放棄は不可能だ。正恩氏は3月5日、韓国の特使団に『北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を持つ理由はない』と言ったとされる。これをもって韓国側は正恩氏が非核化の意思を明確にもっていると解釈した。

     しかし、北朝鮮は05年9月19日にも全く同じことを言っている。北朝鮮を訪れた鄭東泳(チョンドンヨン)統一相(当時)と面会した金正日(キムジョンイル)総書記はこう言った。

     『体制の安全さえ保証されれば、核武器は一発たりとも持つ理由はない。これは金日成主席の遺訓だ。そのためなら査察も受け入れる用意がある』

     査察受け入れに言及するなど、正恩氏よりさらに踏み込んだ発言と言えるが、非核化に前提条件がついていることに変わりはない。こうした条件がある場合、『非核化をしない』という意味でとらえるべきだろう」

    2018年04月06日 17時57分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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