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    国際

    トランプ氏が苦手なタイプ、金正恩氏との心理戦

    明治大学教授 海野素央
     トランプ米大統領の言動は奔放で予測不能と言われる。そのトランプ大統領が6月12日、北朝鮮の 金正恩 ( キムジョンウン ) 朝鮮労働党委員長と史上初の米朝首脳会談に臨む予定だ。会談を前に様々な揺さぶりをかける北朝鮮に対し、トランプ大統領も基本的な立場では譲らない姿勢を見せ、会談での主導権を巡って心理戦を繰り広げている。トランプ氏のコミュニケーションスタイルを研究する明治大学の海野素央教授に、この前哨戦を分析し、今後の展開を予想してもらった。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    「狂人の理論」と予測不能な行動

    • 23日、日帰りでニューヨークに出かける前に、ホワイトハウス南庭で記者団の質問に答えるトランプ米大統領。米朝会談を前に心理戦が激化している(AP)
      23日、日帰りでニューヨークに出かける前に、ホワイトハウス南庭で記者団の質問に答えるトランプ米大統領。米朝会談を前に心理戦が激化している(AP)

    ――米朝首脳会談は、トランプ大統領と金正恩委員長という強烈な個性がぶつかり合う場になりうそうだ。トランプ氏の交渉術をどう分析しているか。

     「トランプ氏の交渉スタイルというのは、『狂人(マッドマン)の理論』と予測不能な行動の組み合わせだ。『狂人の理論』というのは、相手に何を仕掛けてくるかわからないと信じ込ませ、不安や恐怖心を感じさせて交渉のテーブルに引きずり出す戦略だ。ベトナム戦争時に当時のニクソン大統領が北ベトナムを交渉の席に着かせるために用いた。

     トランプ氏は、まだ41歳の実業家だった1987年にニクソン元大統領からもらった手紙を大切に保管している。トランプ氏がよく使う『サイレント・マジョリティー』(もの言わぬ多数派)という言葉は、ニクソン氏が大統領時代に使ったものだ。トランプ氏は『サイレント・マジョリティー』とはだれを指すのかと問われた時、白人労働者、退役軍人といった、この国のエリートたちから忘れられた人々を挙げた。ニクソン氏のことをかなり研究していたのだと思う。

     トランプ大統領はニクソン氏の『狂人の理論』に加えて、予測不能な行動に出ることで相手を翻弄、自分のペースに巻き込んできた。

     トランプ氏は大統領選挙のさなか、メキシコとの国境に壁を造るといったとんでもないことを言い出した。するとメディアは、他の候補者たちに壁をどう思うかと聞く。本当はこんな非現実的なことに答えたくないはずだが、彼らは答えざるをえない。すると、トランプ氏は、彼らは犯罪者に弱腰だ、国境管理が甘いとこきおろす。このようにして相手を自分のペースに巻き込んでいくのが『トランプループ』だ。

     ところが今、問題が起きている。トランプ氏と同じように『狂人の理論』で予測不能な行動に出る金委員長に、自分がやるのと同じことをやられて翻弄されている。大統領選で戦った民主党のヒラリー・クリントン氏のように、真面目で論理的な人にはトランプ氏のやり方が通用したが、金委員長のように自分と同じようなタイプには意外と弱いのかもしれない」

    2018年05月24日 13時12分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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