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    社会

    子どもの居場所…「寂しい思いさせない」子ども食堂

    読売新聞論説委員 古沢由紀子
     無料または低額で地域の子どもたちに温かい食事を提供する「子ども食堂」が、各地で急増している。運営者の団体によると全国で2286か所に上り、推計で年間100万人が利用する。地元の子どもの役に立ちたいという善意を引き出し、地域のつながりを取り戻す効果もあるようだ。子どもを十分に養育できない家庭が増え、その裾野が広がっている実態は見過ごせない。大切なのは、放課後に子どもが安心して過ごせる「居場所」をつくっていくことだ。食事の提供に加え、学習指導など様々な形で子どもをサポートする取り組みを2回に分けて報告する。

    「みんなが来やすい」支援者続々、地域の拠点に

    • 住宅街の一角にある「要町あさやけ子ども食堂」。看板は子どもたちが作ったという
      住宅街の一角にある「要町あさやけ子ども食堂」。看板は子どもたちが作ったという

     明るい日差しが残る午後4時半過ぎ。東京都豊島区の住宅街の一角に、調理器具や食材を手にした近隣の主婦たちが集まってきた。2階建ての家の門塀に、「要町あさやけ子ども食堂」と記された、かわいらしい木の看板が掛けられている。

     笑顔で迎える店主の山田和夫さん(69)は2013年から月2回、自宅を開放している。会社を定年退職したのとほぼ同時期に、妻を病気で亡くした。息子夫婦も関西に転居し、一人暮らしになった。子ども食堂の開設は、地域活動に熱心だった妻の友人たちに勧められたことが大きい。「子ども食堂って、いいネーミング。上から目線じゃない。やってみたい、と思った」と振り返る。

    • 子どもたちのために「カラフルちらしずし」やフルーツなどのメニューをそろえていく
      子どもたちのために「カラフルちらしずし」やフルーツなどのメニューをそろえていく

     子どもは1食100円で、1人でも利用できる。同伴者の大人は300円。午後5時半になると、幼児を自転車に乗せた保育園帰りの母親たちが次々に訪れ、畳敷きの居間でくつろいでいた。小学校高学年のグループや、弟と妹を連れた中学生の男の子も、ダイニングの大きなテーブルを囲む。この日のメニューは高野豆腐やカラーピーマンも入った「カラフルちらしずし」。近隣の主婦らが調理を担当し、揚げたサツマイモとお吸い物、リンゴとミカン、白玉小豆のぜんざいまで添えられている。食後は、おもちゃや絵本が用意された2階の部屋でボランティアの大学生と遊ぶのも楽しみだ。

     少し離れた地域からスタッフに引率されてきた子どもたちもいた。親が仕事や生活に追われて十分に面倒をみられないなどの事情を抱えている。なかには幼い子を抱えたシングルマザーもいる。今年度からは、地元・豊島区の職員が子ども食堂を訪れ、必要に応じて家族の問題や子育てなどの相談に対応する取り組みも始まった。

     「あさやけ」も含めた豊島区内の4か所の子ども食堂は、NPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」が運営している。理事長の栗林知絵子さんは、無料で学習支援をしていた近所の男子中学生から聞いた「家族で一緒にご飯を食べるなんて気持ち悪い」という言葉が、忘れられない。コンビニ弁当などで済ませる「孤食」が当たり前になっていたのだ。

    • 調理は地域のボランティアらが担当する。「我が家にこんなに多くの人が集まるとは」と笑顔の山田さん
      調理は地域のボランティアらが担当する。「我が家にこんなに多くの人が集まるとは」と笑顔の山田さん

     「見かけでは分からないけれど、困難を抱えている子もいる。家族以外の大人と接することで気持ちが救われたり、親に言えないことを打ち明けられたりするのでは」と栗林さんは話す。そのためにも、「みんなが来やすい居場所」をつくることが大切なのだという。

     この日、「あさやけ」には50人を超える利用者があり、初めて参加したというボランティアの姿も目立った。米や野菜などの食材は、企業や農家から寄付されたものも活用する。「子ども食堂を始めてから、地域に知り合いが増えた」と山田さんはうれしそうだ。

    2018年06月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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