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    社会

    子どもの居場所…「希望の進路へ」学習支援で後押し

    読売新聞論説委員 古沢由紀子
     「孤食」が日常になっている子どもたちに、温かい手作りの食事を提供しようという子ども食堂の取り組みを前回紹介した。中学生以上の生徒にとっても、地域に安心して過ごせる「居場所」があることは重要だ。食事だけでなく、基礎学力を向上させ、進路の選択肢を広げる機会につながる場でもあれば、なおいいだろう。困窮家庭の子どもたちを対象に、自治体やNPOなどによる学習支援は各地に広がっている。なかでも、「より支援の必要な」子どもたちに対象を絞った東京都足立区の実践は、示唆に富んでいる。

    「看板、表示なし」気兼ねもなし

    • 「居場所」を利用する生徒は個別に学習指導を受けることができる(東京都足立区で)
      「居場所」を利用する生徒は個別に学習指導を受けることができる(東京都足立区で)
    • 机と椅子が整然と並ぶ教室は学習塾のようだ
      机と椅子が整然と並ぶ教室は学習塾のようだ

     全国でも先進的な取り組みとして足立区が2015年夏に始めたのは、「居場所を兼ねた学習支援」事業。地域に開かれた子ども食堂とは異なり、あえて「クローズド」な空間がつくられている。当初は1か所でスタートさせ、現在は区内4か所に拠点が増えている。利用者の中学生は計約250人に上る。

     「居場所」の入り口に看板や表示はなく、外からは何の施設か分からない。子どもたちが出入りに抵抗感を持たなくても済むようにするためだ。就学援助を受けている世帯が主な対象で、ひとり親家庭の子どもが7割近い。福祉事務所や学校を通じて参加を促し、保護者の同意を得て登録してもらう仕組みだ。

     子ども食堂との違いは、週4~6日開設していることだ。午後3~4時に始まり、8~9時まで開いている。土日曜や夏休みなどは早い時間からの利用が可能だ。ひとりぼっちになりがちな週末や長期休暇中は就寝時間が遅くなり、生活リズムが狂いやすい。落ち着ける場所があるのは貴重だろう。

     困窮世帯の子どもの支援に携わってきたNPO法人キッズドアと同カタリバに運営を委託し、学習指導を充実させている。週1回程度の講義のほか、大学生のボランティアらが連日、マンツーマンでの補習を支える。

     生徒たちの楽しみは、スタッフらがキッチンで手作りする夕食だ。調理や配膳を手伝い、テーブルを囲んで味わう様子は、大きな家族のようでもある。共有スペースに卓球台やダーツが置かれ、自習室には漫画や本も用意されている。明るく、リラックスできる雰囲気だ。


    • 広々としたキッチンで調理された夕食は生徒たちの楽しみだ
      広々としたキッチンで調理された夕食は生徒たちの楽しみだ

     中学1年の女子生徒は「ほぼ毎晩9時までここにいる。料理をしたり、みんなと話したりするのが楽しい」と話す。通常の勉強だけでなく、「サークル活動」があるのも魅力になっている。グループごとに調べ学習やプレゼンテーションをする機会があり、学校を欠席しがちな生徒やリーダー的な役割を担うことが少ない生徒にも、貴重な機会となっているようだ。

     ここでも、地域住民や学生ボランティアが多数協力している。初めて身近に大学生と接し、進学について考えるようになった生徒もいる。職業体験や企業見学を行い、将来について考える取り組みにも力を入れる。食事などのマナーや言葉遣いが身に付いていない生徒もおり、社会に出た時に困らないようアドバイスすることもあるという。

    2018年06月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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