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ドメーヌ・ディディエ・モンショヴェ(上)Domaine Didier Montchovet
土と共に生きるビオディナミスト

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ロック音楽家のようなたたずまい
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標高の高いオート・コート・ド・ボーヌ地区の畑
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畑を駆けまわるウサギのフン
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多彩な草花が畑の生態系の一部をなす
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畑に生えていたハーヴの一種

 ビオディナミに取り組む造り手には共通した雰囲気がある。野生的、個性的、主張が強い。それは男女を問わない。ディディエ・モンショヴェは長髪を後ろで束ねた野人の雰囲気。しかし、醸造学校で教師もしていた理論派でもある。

 ドメーヌのあるナントー村は、コート・ド・ボーヌ地区のポマール村から北西に伸びた上り坂をユルユルと登っていく。オート・コートと言われる地区は、ニュイ地区もボーヌ地区も似たような雰囲気がある。コート・ドールの西側の丘陵地帯にあり、ブドウ畑がありそうな感じがしない。山がちで、畑の区画もとぎれとぎれ。グラン・クリュ(特級)の整然とした畑の美しさはない。

 モンショヴェの畑も、有名なグラン・クリュを見慣れた人間の目には奇異に映るだろう。標高は350〜400メートル。谷あいをはさんで、畑が点在している。ブルゴーニュというより、ロワールやローヌを思い出させる。総面積は9.5ヘクタールで、そのうち、5ヘクタールの南西斜面でピノ・ノーワルを栽培。残りはシャルドネに当てられている。

 ブドウ栽培農家に育ったモンショヴェだが、20歳のときにビオディナミに興味を持ち始めて、父親と意見が食い違い、早くから家を出た。1984年に畑を借りて、ブドウ栽培を始め、少しづつ畑を購入して、広げてきた。デメテールの認証も取得している。

 「ビオディナミが面白いのは、色々なアイデアを試せるところだ。今日よりも、明日の方がよくできる。そのために、様々なことにトライできる。決まりに縛られることはないし、終わりもない。音楽や美術に似ているかもしれない。ピカソのように自由な表現ができるんだ。ドレミファソラシドを鳴らすだけではなく、それ以上の音を出すことが出来る」

 ヴァイオリンをたしなむ音楽家らしい表現で、その魅力を説明してくれた。

 昼下がりの畑には常に微風が吹きつけている。標高が高いから、ブドウが熟すのは時間がかかりそうだが、病害の危険は少なそうだった。もっとも、後から聞いた話では、8月の雨と低温でブドウの腐敗が始まり、季節労働者を雇って腐った房を取り除いたそうだ。

 「1ヘクタール当たりの平均収量は白が35ヘクトリットル、赤が40ヘクトリットル。07年はべと病が広がったので、もっと減るだろう」

 ブドウの樹の周りには様々な種類の草花が生えている。ウサギの糞もコロコロと転がっていた。畑の裏側には森があり、自然な生態系が保たれている。

モンショヴェは見慣れない草を指さしながら

 「この草は土中にすき込むことで肥料になる。ウサギの糞も肥料になる。自然に存在しているものを利用するんだ。害虫が発生するとしたら、薬で殺すのではなく、なぜ害虫が発生したのかを考えて対処しなければいけない」と熱心に語る。

 足元を改めて見つめると、本当に多彩な草花が生えている。モンショヴェはその1つ1つに通じているようだった。「雑草という草はない」という言葉があるが、植物がそこに存在するからには、何らかの存在意義があるということだ。森も、ブドウ畑も、風も、雨も一体となって1つのテロワールを形作っている。

 「土壌がしっかりとしていれば、草花の種類はどんどん増えていく。最近は、天気予報で雨の予報を流していると、土壌が湿っていることがわかるようになった。反対に乾いているときは雨は降らない。それは確信をもって予想できるようになった」

 土と共に生きるとはこのことを言うのだろう。

2007年7月訪問

テキスト&フォト 山本 昭彦

2008年6月13日  読売新聞)
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