とろり優雅ウィーンの味年の瀬になると、学生のころにウィーンで過ごした正月休みを思い出す。当時は家族とイギリスに暮らしていて、ウィーンに住む叔父を訪ねたのだ。 叔父は私たちを旧市街から車で20分ほどのグリンツィング村へ連れて行ってくれた。通りにはワイン居酒屋、ホイリゲが軒を並べ、入り口に松の木の丸い玉が下がっている。聞けばこれらの店は地元のワイナリーが運営しているものが多いという。松の玉はそこで新酒が飲める印。コップになみなみと注がれた白ワインの、おいしかったこと! これが私のワイン初体験だ。ウィーン市自体が、市内にワイン産地を擁する世界でたったひとつの首都と知ったのは、それからずっと後のことだった。 前置きが長くなったが、今回のワインはその音楽の都で造られた白。都市部で造られたワインなどと侮ってはいけない。とろとろした質感、飲み込んだあとも優雅にすーっと続いていく蜂蜜(はちみつ)の風味、そして気高い香り。その魅力に、いっぺんで参ってしまった。 造り手は、それまで地元の人さえも良いワインができるはずがないと軽視していたこの地を、「ウィーンこそ銘醸地なり」と自らのワインで証明したリヒャルト・ザーヘルさん。実はリヒャルトさん、シェーンブルン宮殿の庭内にも畑を持っている。いずれはそのブドウも、このワインにブレンドされる予定だ。 値ごろ感があるのに、ちょっとぜいたくで幸せな気分に浸れる、クリスマスにぴったりの1本。ぜひお試しあれ。 鹿取みゆき(フード&ワインジャーナリスト) この一本シェーンブルン・ゲミシュター・サッツ(オーストリア)高貴なワインと呼ぶにふさわしい香り、味わい。ラベルには世界遺産のシェーンブルン宮殿が描かれている。http://sankyushokai.com/ 750ミリ・リットル 2800円 (2007年12月17日 読売新聞)
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