ワイナリー訪問のひそかな楽しみライトボディ 余韻の長さと複雑性ロックフォード ローカル・グロワーズ セミヨン 2006(19/20点)色調は中程度のゴールドです。芳香性は高く、熟したハニー・アップルや西洋カリン、そして湿った藁や土っぽい熟成感が感じられます。そのほか、トースティな熟成香など、非常に複雑なプロファイルを呈しています。 味わいはスムースで、酸味は低め、そしてアルコール度は13.5度となっていますが、実際には11.5度程度にしか感じないライトな印象です。ライト・ボディであり、余韻が長く、類稀な複雑性を呈し、それはバター・スコッチ、そしてトースティな香ばしさも存分に感じます。今飲んで大変美味しい状態で、ボトル内の熟成でポジティヴな変化は今後無いと思われますが、この状態で2-4年は熟成が可能かと思われます。 しなやかなシェイプ 土っぽい複雑性ドメーヌ・ソガ バルベラ(16/20点)中程度のルビー・レッドです。芳香性は中程度。フレッシュさを存分に有するクランチーなクランベリー、そしてアセロラ的な赤系果実が中心の香りとなります。そして冷涼な気候を思わせるハーブの香り、それが甘さを連想させる新樽によるヴァニラ香とバランスを取っており、一方では土っぽさの複雑性を呈しています。 味わいでは香りにも感じたヴァニラのわずかな甘み、そして高い酸味、インテンシティは控えめではありますが、同時にタンニンもチョーキーで穏やか、その全体のスレンダーな印象が総体的な飲みやすさにつながっています。アルコール度もやや控えめなことも全体のシェイプをしなやかに感じさせる一助となっているでしょう。まだ若々しい状態のワインであり、新樽香がパーフェクトに調和はしていませんが、今後4-6年の熟成を経てインテグレーションが取れてくるものと思われます。 肉厚なパレット スパイシーな香りフィルハーレヘン メルロー(16/20点)中程度のルビー・レッドで、縁に少々の紫のリムが残ります。芳香性は高めで、トップにはカシスやブラックチェリー様の黒系果実香が中心です。ミーティー、そしてコール・タール的なスパイシーな香り、そして控えめな樽香、また、やはり控えめではありますがユーカリ・ミントのハーブ香も感じるところはどことなくチリの印象も呈します。 味わいは滑らかなアタックに始まり、酸味は中程度、タンニンは幾分グラヴェリーな印象がわずかな粗さを感じさせるものの中程度に存在し、味わいの基調を成しています。アルコール度はやや高め、インテンシティは中程度ですが、ミーティーなフレーヴァーがこのワインのミッド・パレットを肉厚に感じさせる一助となっています。今飲んで十分に美味しく、バランスの良さが今後3-5年の熟成を保証しています。 セラー・ドア限定品 お得な旅の喜び新年明けましておめでとうございます。昨年は、出張などで日本全国の旅先にて、実に多くの方々から「ヨミウリ・オンラインをいつも楽しみにしています」とうれしいお言葉、励ましをいただきました。今年も可能な限り多角的な目線から、ワインを楽しくお話して行きたいと思います。1年間、よろしくお願いいたします。 さて、昨年の12月上旬、仕事で立ち寄ったオーストラリアのバロッサ・ヴァレーにて少し時間があったので、数軒のワイナリーを自主的に訪問してみました。オーストラリアはアメリカのナパ・ヴァレーなどと同じく「ワイン・ツーリズム」の盛んな産地です。 旅する人々は思い思いのワイナリーに車で立ち寄り、簡単に見学したり、併設されているレストランで郷土料理、時には先進的なお料理をたんのうし、気に入ったワインを購入して、車に積み込んで帰るわけです(注:もちろん酒気帯び運転は厳しく取り締まられます!)。この「ワイナリーにおける店頭購入」を「セラー・ドア」と称します。ワイナリーの貴重な現金収入になっており、力を入れているワイナリーではあれやこれやと、セラー・ドア販売に工夫を凝らしています。 こうしたツーリズムを楽しむお客様に、「このワイナリーに寄ってみたい!」と思わせるべく、社屋を一流のデザイナーにデザインさせるワイナリーがあります。オーストラリアでは、具体的な例を知りませんが、スペインはリオハのプロトスなどは有名な英国人デザイナーを起用し、斬新でモダンなデザインとなっています(スペインでは最近こうしたセラー・ドアを強化するワイナリーが劇的に増えてきています)。 私が今回のオーストラリアで訪問したロックフォードはさほど豪華ではなく、小さくまとまっているセラー・ドアでしたが、所狭しと次から次へとお客様が訪問し、様々なワインを試飲し、気に入ったワインを買っていました。通例は割安に設定された一定額を支払い、自由にワインを試飲します。そこにはプロの意見に左右されない、自分自身の嗜好を信じる自由かっ達な「お買い物」の風景が見て取れ、あこがれてしまいます。しかし、このセラー・ドアには、ひそかに「さらなるお得」が隠れています。 というのも、いくつかのワイナリーでは、このセラー・ドアの強化策として、「セラー・ドアでしか試飲、購入できないワイン」を設定しています。それがわざわざ訪問してくれた方々への特権になっているのです。エントリー・レベルなのか、はたまたプレミアム・レンジなのかは、ワイナリーによりますが、「そこでしか楽しめない香味」はワイン好きとしても大いなる楽しみ、そしてワイン愛好家でなかったにせよ、旅の喜びになるのは間違いありません。 カリフォルニアのプレミアム・ワイナリーとして日本でも人気が高い「オーパス・ワン」のセラー・ドアに「オヴァーチュア」という銘柄のワインが存在し、それを限定数購入する日本の方が多いという情報を思い出します。セラー・ドアのみの販売なのかどうかは私は知りませんが、オーストラリアのセラー・ドア市場にも多く存在しています。 今回訪問したセント・ハレットでは、ユニークなことに「スパークリング・シラーズ」でした。シラーズという品種はもちろん黒ブドウですが、それをシャンパーニュのように白ブドウの醸造法で醸造するのではなく、通常の赤ワインの醸造法であるマセレーションをして赤ワインに仕立てます。それに二次発酵を起こさると、いわゆる「赤のスパークリング」となります。 これが何とシャンパーニュと同様のトラディショナル・メソッドでの醸造。樹齢は100年を超えるフラン・ド・ピエ(フィロキセラと称されるブドウ根アブラムシの害を避けるため、一般的に行われる根部分の継ぎ木を行っていない樹)のシラーズから造られているのだから驚きです。そんなレア物に出会うと、物すごく得した気分になりますよね! そんな楽しいセラー・ドア。是非ワイナリー訪問の際はこうした雰囲気を楽しむのはもちろん、ひそかなお得の喜びを堪能するのもお忘れのないようにして下さいね。それではまた次回。 (2012年1月5日 読売新聞)
■筆者プロフィル
大橋 健一
(株)山仁酒店の代表取締役社長。リカー・コンサルティング(株)サマーソールト取締役兼プレミアム商品開発室長。WSET LondonのDIPLOMA、(独)酒類総合研究所清酒専門評価者などの資格を有するほか、インターナショナル・ワイン・チャレンジ・ロンドン日本酒部門副議長、ジェニー・チョー・リーMW運営「アジアン・パレット」http://www.asianpalate.com/のエキスパート・パネルなど、世界のワイン、日本酒シーンで活躍する。http://twitter.com/KenichiOhashi/でワインや日本酒のフード・ペアリングを配信。
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