古典に回帰する「ルシアン・ル・モワンヌ」ブルゴーニュの新進ネゴシアンとして注目される「ルシアン・ル・モワンヌ」が初来日し、古典的な手法にこだわるワイン造りの哲学を披露した。 当主ムニー・サウマ氏はレバノン出身。22歳でフランスに渡り、各地でワイン造りの修行をした。ピノ・ノワールに興味を持ち、やはりワイン造りを学んでいたロテム夫人と共に1999年にネゴシアンを設立した。コート・ドールの優れた特級、1級の畑から買い付けるサウマ氏の理想は50〜60年前のワイン。そのために、半世紀前と同じ醸造手法に回帰している。 「47、57、59年のワインが現代のワインより何故長生きするのか。50年前は収穫も遅く、家の中も寒く、発酵はゆっくりと進んだ。湿度の高い冷たいカーヴを探して、作業しているから、マロラクティック発酵もゆっくりと進む。ビン詰めまで澱の上に保つことで、炭酸ガスが樽の中にたまり、酸化防止剤を最小に抑えられる。添加量は発酵後と瓶詰め前に計10ミリグラム。時間をかけて入れるのが大切だ。赤も白もバトナージュを行い、澱から複雑味を得る。当時と同じくろ過も清澄もしない。昔はポンプもなかった。ワインは重力を利用して、大気の安定する満月の夜に瓶詰めする」 ドメーヌの元詰めが進むコート・ドールだが、優良な栽培農家から白ワインは果汁で、赤ワインはキューブで発酵中のものを底にたまった固形物と一緒に購入している。 「大切なブドウを売ってもらえるのは人間関係の密接なブルゴーニュならでは。畑仕事を普段から見ているから、いい農家はわかる。東京の寿司屋がいい漁師から魚を仕入れるようなものだ。目星をつけておいて、テイスティングをして買い付けるか決める。栽培に細かく注文をつけなくてもすむような農家のブドウしか買わない。それぞれの区画で最高のものを1〜3樽。育成に手間がかかるので現在の100樽が限度だ」 05年の白3種と赤4種を試飲した。「ペルナン・ヴェルジュレス プルミエクリュ スー・ル・フレティーユ」(希望小売価格1万2500円)は畑の概念を超える豊かさと複雑性。「ムルソー・ペリエール」(1万8000円)はトロッとした甘みすら感じる深い味わい。「コルトン・シャルルマーニュ」(2万5000円)は堅牢なミネラルと長大な余韻。 「05年のペルナンは酸もミネラルもしっかりあり、アフターには甘みも感じる。ムルソーは岩盤が浅く、斜面が湿度を蓄え、成長に時間がかかり、ファットな感じになる。いずれも石灰質が強く、奥行きと複雑性がある。コルトン・シャルルマーニュは05年の中で最も早くマロラクティック発酵が終わった。入念にバトナージュを行った。ブルゴーニュのワインは格が上のものになるほど、こちらから本質を探しに行かねばならない」 「ポマール プルミエクリュ・ルジェ」(1万5000円)はがっしりした土臭さ。「ヴォーヌ・ロマネ プルミエクリュ・スショ」(1万8000円)はさすがのスケール感。「クロ・ド・ラ・ロシュ」(2万2000円)はミネラルの塊。 「ポマールは赤い土なので『ルジェ』という名になった。長期熟成型だが、タニックでドライな味わいは特色ではなく、本来は丸くてふくよか。スショは05年のブルゴーニュの1級畑で最も成功した。香りだけですごいポテンシャルがある。クロ・ド・ラ・ロシュはモレ・サン・ドニの中で他とは異なる1つの王国のようなもの。果実が豊かで最後にサクランボのニュアンスがある。忍耐が必要なワインだ」 最後の「ボンヌ・マール」(3万2000円)はおおらかで雄大な味わい。「ボンヌ・マールは個人的に大好き。スポンジのようにピノ・ノワールのあらゆる要素を吸い取って、表現してくれる。ミュジニィと違ってつかみどころがないのがいい。友人には『ペトリュスやDRCがあってもボンヌ・マールを選ぶから、お金がかからないだろう』と冗談を言っている(笑)」 ワインは26あるフランスの3つ星レストランの16軒に納めている。「DRC醸造長のベルナール・ノブレ氏と、ピノ・ノーワルは若いときから熟成するまでおいしくなければならないという点で一致した。そのため、澱をバトナージュして成分を染み込ませるのが大切。私のワインは生きている。飲むときは1度カラフェに移して、炭酸ガスを飛ばして欲しい」と。 問い合わせは中島董商店(電話 03・3405・4222)。 (2007年10月31日 読売新聞)
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