ハタハタの干物 鍋で変身今年は暖冬だと言われていたのに、このところ寒い日が続いている。昨日の朝、薄暗いうちに目覚めて外を見るとサラサラとした細かい雪が降っていた。 明け方に起きたワケは、大急ぎでやらなければならない仕事があったから。朝食を済ませて仕事に没頭すること数時間。ふと外を見ると、雪は雨に変わっていた。表に出てみると寒い。雪が降っていた時刻よりもっと寒くなっているような気がする。簡単スパゲティで昼食を済ませ、今夜は冷蔵庫に残っている食材で何かを作ろうと思った。 仕事が一段落したのは午後8時半。冷蔵庫をあさってみると、朝食用に買ったハタハタの干物があった。ごはんを炊き、ハタハタを焼いて食べるかと思ったが、それじゃあまりにも悲しい。干物だけれどハタハタを入れた鍋を作ったらどうだろうと思い、やってみることにした。 ちなみに前夜は「カキの土手鍋」。連夜の鍋だが夫は許してくれるだろう。ありがたかったのは、鍋に入れる材料が少しずつ残っていたことである。 カツオとコンブのだし汁に調理酒をたっぷり(半合くらい)、ハタハタの干物(丸ごと)とシイタケ、ハクサイを入れて煮ること10分間、味見してみると、野菜から出たうま味成分もさることながら、ハタハタから抽出されたと思われる、枯れたうま味が加わっていて、おいしくなりそうな予感! 塩と醤油(しょうゆ)を少しずつ入れて味見しているうちに、深みのあるおいしいおつゆが完成した。 卓上コンロに鍋を設置。鍋の回りに並んでいるのは豆腐とエノキダケとレタス、そしてスダチ。器におつゆを取り、スダチをギュッと搾って飲んでみるとますますおいしい。30分以上も煮込まれたのに、ハタハタは煮くずれしていない。頭からガブリとかぶりつくとジュワジュワとうま味エキスが流れ出た。しかし、「うまい!」と言ったその直後、骨がやわらかくなっていないことに気がつく。 のどに刺さりそうな手ごわい骨。飲み込まないように気をつけながら食べる。淡泊ながら、ほのぼのとしたうま味が口の中に広がっていく。ああ、幸せ。 窮鼠(きゅうそ)猫を噛(か)む的私の思いつきで、ハタハタの干物は大事業を成し遂げたのかも……今日という一日は充実していたなあ、と深い眠りについたのである。(イラストレーター、絵も) (2008年2月7日 読売新聞)
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