焼きそば のりのり最近たびたび焼きそばが食べたい、と思うようになった。それなりに長く生きてきた中で、これほど頻繁に焼きそばを欲した時代はない。思いがけない好みの変化だ。 最近、私が決めた焼きそばの掟(おきて)は、焼きそばには豚肉とキャベツがなくてはならぬ、というもの。カリッと焼けた豚肉と生っぽいキャベツは蒸し焼きそばのポソッとした食感と実によく合うのである。 焼きそばの玉に付いてくる調味料を使って何度も作り、それなりにおいしいとは思ったが、心の底からおいしいなあ、とは言えなかった。もっとおいしい焼きそばを作りたい!という気分に何度も襲われたのだけれど、なかなかいいアイデアが浮かんでくれなかった。 せいぜい私がやったことといえば、同封調味料の代わりにオイスターソースと日本酒、しょうゆで味付けをする程度。おいしいでしょ、と威張れるほどの焼きそばは誕生していなかったのだ。 ある日の昼、またもや焼きそばが食べたくなったので買い物へ出かけた。目に付いたのがアサリ。酒蒸ししたアサリのスープで作ったらおいしいのではないか、というアイデアが浮かんだ。 砂抜きしたアサリを鍋に入れ、日本酒(大さじ1)を振りかけて殻が開くまで火にかける。フライパンに油(大さじ2)を注ぎ、焼きそば(蒸し、2玉)をほぐさず入れて火をつけ、両面に焦げ目をつける。薄切り豚肉を5センチ程度に切り、焼きそばの脇に置いてカリッとするまで焼く。 アサリのスープに鶏ガラスープ顆粒(かりゅう)(小さじ1)を溶かし、オイスターソース(大さじ1)を混ぜ合わせてフライパンに注ぎ、約3センチ角に切ったキャベツ(3、4枚分)と小エビ(6尾)、ネギのみじん切り(長さ10センチ分)、アサリを加え、麺(めん)をほぐしてから1分間火にかける。 アサリとエビをプラスしただけだというのに、味はこんなにも変わるのか……麺にしみ込んだそれぞれのダシはそれまで私が作った焼きそばとは違う、ご馳走(ちそう)っぽい味を生み出していたのである。焼きそばブームはまだ続きそうだ。(イラストレーター、絵も) (2008年7月31日 読売新聞)
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