香り濃厚 鶏肉赤ワイン煮「最近、これぞフレンチ、という料理が我が家の夕食に登場しないね」。夫が不満顔で言った。食べたいものを尋ねると「鶏肉の赤ワイン煮」と即答。たまにはこっくりしたフランス料理が食べたい。夫の希望はそういうことだったのだ。彼の言葉に触発されて、赤ワインの滋味が染み込んだ鶏肉を思い出し、私も食べたくなった。 骨付きの鶏もも肉とマッシュルーム、ベーコン、赤ワインを準備して調理を開始。塩、コショウをした鶏もも肉を容器に入れ、赤ワインをひたひたに注いで一晩寝かせる。 サラダ油とバターを熱したフライパンでベーコンとスライスしたタマネギをいため、取り出す。同じフライパンに鶏肉を入れて表面がきつね色になるまで焼く。 厚鍋に、ワインも含め、すべての具材を入れて塩、コショウをし、時々混ぜながら弱火で1時間煮込む。マッシュルームをバターでいためて鍋に加え、弱火で30分煮込む。鶏肉とマッシュルームを取り出し、冷めないようにオーブンで温めておく。 小鍋にバターを溶かし、小麦粉を加えて混ぜ合わせ、鍋のスープを加えてルーを作る。ルーをスープに混ぜて煮詰め、トロリとしたソースを作る。 鶏肉とマッシュルームを器に盛り付け、ソースをかける。 完成した料理は食欲をそそるチョコレート色。器からは濃厚な香りが立ち上っている。「う、うまい」。一足先に食べ始めた夫が大きな声を発した。「どれどれ」と私も続いて食べてみると、軟らかく仕上がった鶏肉にワインのうまみが染み込んでいる。ソースを絡めて食べると、威厳に満ちたうまみの中に酸味や甘味が隠れていて、奥深い味わい。料理に使ったのと同じ赤ワインを飲みながら、鶏肉を食べきり、残ったソースはパンでぬぐって食べきった。 「最近忘れていたわ、このおいしさ」と私が言い、「こういう味、たまには食べさせてよ」とうれしそうに夫が言った。(イラストレーター、絵も) (2010年3月6日 読売新聞)
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