泡盛 貯蔵のしかたで個性泡盛のテースティングをした。600年前、シャム(現在のタイ)から伝わったとされる沖縄伝統の蒸留酒は〈1〉原料がタイ米〈2〉黒麹(こうじ)を使う――が大きな特徴。古酒に新酒を段階的に継ぎ足す「仕次(しつ)ぎ」もよく行われる。とは言え、あの独特の芳香に大きな違いなどあるのだろうか。 早速、白紙の上に4種類の泡盛が。左側の二つは透明で右側はきれいな琥珀(こはく)色、特に右端はグッと陰影が増す。「色付きのは樫樽(かしだる)で寝かせたもの。右端は8年貯蔵になります」。主催した名護市の「ヘリオス酒造」マーケティング本部長、松田あすかさんが解説する。確かに右端のものを口に含むと、樽香(たるか)と共にコクの深い甘味が広がる。 ちなみに透明組の一つはステンレス容器、もう一つは素焼きの瓶(かめ)による貯蔵だそう。前者には米の表面を磨く“吟醸香”が、後者には瓶由来の土っぽさや重みがそれぞれ感じられる。 いや同じ泡盛でこんなにはっきり性格が出るとは。「熟成の時間ももちろんですが、貯蔵のしかたで意外な個性が生まれることもおわかりでしょう」 沖縄の大半の醸造元は、地元の酒造組合連合会が一括輸入したタイ米を使っており、黒麹も酵母も規格品が普通だ。蔵元ごとに仕込む水や作業手順が違っても、結局風味は似たり寄ったりでは? 実はそんな先入観もあったが、改めてその奥深さを思い知らされた。 何度かの沖縄ブームを経て手軽に飲める泡盛、その割に原料がタイ米とは案外知られていない。原料表示も単に「米こうじ」とあるだけだ。だが、かつて一大交易国として栄えた琉球王朝を象徴する名酒ならば、そのルーツをきちんとラベルに刻むことも、沖縄を知る小さな一助にはなるはずだ。(宇佐美伸) (2005年11月7日 読売新聞)
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