こごめ大福 餅に米粒食感なめらか江戸時代、東京・根岸の里は音無川(おとなしがわ)の清流が流れ、良質の米がとれる米所であった。農家の人々は年貢に出せなくなった割れ米、粉米(こごめ)をうるち米、もち米の区別なく集め、餅(もち)にした。ある茶屋が、その餅で大福を作って売り出したところ、大変な人気になったそうだ。 この故事にちなんだのが、根岸の和菓子店「竹隆庵岡埜(ちくりゅうあんおかの)」のこごめ大福である。よもぎ餅と白餅の2種類があり、中はどちらも粒あんだ。大ぶりで、あんがたっぷり入っている。 「こごめ」の名にふさわしく、餅は米粒が残るよう、7分づきにしている。だから表面はわずかにでこぼこしているが、食べると舌に当たらない。なめらかでこしがあり、歯切れがいい。これが、この店の工夫である。もち米のうまみと、うるち米のさっぱりした感じ、ほどよい塩味が相まっている。よもぎの香りも立っている。 あんは自家製で、塩気のある餅皮に合うように、甘さを控え、小豆の風味を生かして仕上げている。最初は大きいと思っても、するっと食べられて、まだ、もうひとつという気分になる。 「餅は季節や、その日の気温、湿度によって、できあがりが変わってくる。その見極めが1番難しいですね」と、販売部の石橋功さん。 たとえば、秋の水分の多い新米か、春ごろの乾燥した米か。蒸すときに重ねるセイロが、上にあるか下にあるかによっても、米への蒸気のあたり具合が違う。それを職人が目で見て、手で触って、つき方、加える水の量を加減するのである。 以前、別の店のご主人に「30年以上毎日ついているが、今日はすべてがうまくいったと思えるのは、10日に1度あるかないかだ」といわれた。 さほどに、餅菓子は微妙で難しいものなのである。(フードライター) 御菓子調製所・竹隆庵岡埜 〒110・0003 東京都台東区根岸4の7の2 (電)03・3873・4617 (2004年10月14日 読売新聞)
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