発酵鮎のうまみ凝縮「石窯焼き鮎ピザ」独自の白熟クリームで味に深み鵜飼シーズン(5月11日〜10月15日)は遊覧船の乗船客でにぎわう岐阜市の長良川河畔、通称「川原町」は格子戸の家並みが続き風情漂う町だ。その一画に鮎(あゆ)の塩焼きで名高い「川原町泉屋」がある。この店にあえて鵜飼シーズンを外して訪ねた。実はオフシーズンのみ提供される「石窯焼き鮎ピザ」があるからだ。 鮎が丸ごとのっかっていたり、その身がまぶされたりしているわけではない。杉だるに1年間、子持ち鮎とご飯をつけ込んで、じっくりと発酵させ、なれずしをつくる。鮎のエキスをたっぷり吸い込んだご飯をベースに、生クリーム、サワークリームを混ぜペースト状にしたのが、同店独自の「白熟(しろじゅく)クリーム」。このクリームを、モッツァレラチーズやミニトマト、あるいは肉入り飛騨みそなどとともにトッピングするのが鮎ピザだ。昨年秋から、同店オーナーで泉屋5代目の泉善七さんがピザづくりに挑戦し、今春の鵜飼シーズン前にメニューに載せた。 鮎づくしの味の秘密はまだある。ジェノベーゼでは天然鮎の魚しょうを加えてつくったソースを用いているし、いずれのメニューでも、トッピングの最後には、アンチョビーならぬ発酵した鮎を原料にした“あゆチョビー”ソースをかける。となると、色んな味を確かめたくなるもの。混んでいなければ、マルゲリータとジェノベーゼの組み合わせというように、1枚で2種類のピザを頼むことも可能だ。食べても驚かされる。鮎の味、あるいはなれずし独特のくさみも覚悟していたが、その点では普通のピザだった。いや、チーズの風合いが増し、味に深みが出たとでもいおうか。2年前に白熟クリームを考案、開発した泉さんは「同じ発酵食品同士で、チーズとの相性は抜群だと自信があったので、ピザに挑戦したのです」という。 内臓ごと漬け込めばくさみなく
1枚で2種類の鮎ピザも注文できる。写真は右半分がマルゲリータ、左半分がジェノベーゼ
石窯焼き鮎ピザのランチは1400円から。写真は飛騨味噌。あゆチョビードレッシングのサラダが付く(ドリンクは別)
落ち着いた雰囲気の店内(2階)。1枚板のテーブルが並び、壁には郡上竿がかかる
「長良川をはじめ川に恵まれた岐阜県は良質な鮎の宝庫。この資源をもっと生かせないか」と泉さんは15年ほど前から、なれずしに挑んだ。元々、鮎のなれずしは江戸時代に始まっている。鵜飼でとれた鮎を用い、江戸の将軍へと早飛脚で献上された。しかし、これは数日寝かせただけのなれずし。泉さんは琵琶湖のフナずしを参考に、じっくり発酵させる道を選んだ。フナずしでも従来の鮎のなれずしでも内臓を取り出したが、泉さんは内臓ごと漬け込んでいる。「塩焼きでも、本来、鮎は内臓ごと食べる魚ですから」。結果的にうまみは濃厚だが、くせがなく、誰でも食べやすいなれずしとなった。白熟クリームはそこからの発展品。食材としての可能性に、泉さんの夢はさらに膨らんでいる。 鮎ピザはマルゲリータ、ジェノベーゼ、飛騨みその3種類が1400円、キノコとカチョカヴァロが2100円で、平日のランチタイムにはサービスであゆチョビードレッシングのサラダが付く。もちろん、鮎の塩焼きを堪能するコースもある。
(2011年11月8日 読売新聞)
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