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「野菜の天ぷら」 羽田美智子さん

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「友人を自宅に招いて、料理を振る舞うこともあります。鶏団子鍋が好評です」=園田寛志郎撮影

“素材”引き出す母の味

 料理は得意だから、たいていのものは作る。けれど「野菜の天ぷらだけは自分では作らないことにしているんです」と教えてくれた。

 「母が作ってくれるのが一番だからです。何てことない、野菜の天ぷら。でも、おいしくてまねできない味なんです」

 茨城県の水海道(現・常総市)で育った。子どものころから母親の美枝子さん(70)が作ってくれる天ぷらは、いろいろな野菜に彩られている。サツマイモ、カボチャ、シシトウ、ピーマン、そして庭に植えてあるシソも……。いつも4時間くらいかけ、近所に配って回れるくらい大量に揚げる。

 おいしく揚げるコツは、衣にひとつまみの塩と氷を入れること。揚げたてを、大根おろしを入れたおしょうゆにつけていただく。「私にとって、おふくろの味は天ぷらなんです」

 芸能界に入ったのは18年前。幼いころから「人前で何かを発表する仕事をしたい」との思いがあった。実行力も伴っていた。短大に通っていた時、オーディション雑誌を買って応募したのが最初の一歩。オーディションには落ちたが、その後、プロダクションからスカウトされた。

 「右も左もわからない状態で、未知の世界に飛び込みました」

 最初は、映画の仕事に無我夢中で取り組んだ。芸能界入りに反対していた両親も、次第に理解してくれるようになった。今では出演した映画やドラマを見て必ず感想を話し、そして褒めてくれる。連続ドラマへの出演のほか、最近では、情報番組のナレーションを務めるなど、活動の幅を広げている。

 ただ、どんなに忙しくても、月に1度は両親のいる実家へ帰る。そのときは近くに住んでいる2人の兄の家族も集まり、一緒に食事する。メニューはたいてい母親の天ぷらだ。

 台所では、小学生のめいや兄嫁たちと、天ぷら作りを手伝う。野菜を切る係、衣をつける係などと手分けして、世間話や冗談を言いながら母親を囲む。それがたまらなく楽しい。

 「そのとき、素の自分に戻ることができるんです。華やかに見せたり、人に夢を与えたりするのが女優の仕事。でも水面下ではいつも、おぼれないように必死にもがいています。でも家族の前では飾る必要も、格好の付けようもありませんから」

 東京の自宅へ戻るときは、母親がおみやげに天ぷらを持たせてくれる。

 「自分の演技をビデオで見て、わーっと悲鳴を上げてしまうことがある。ベストを尽くしたと思っても、新たな反省点が見つかるのです。そんな時、母の天ぷらをレンジで温めて食べます」

 ふわふわ、さくっ。自分を励ましてくれる優しい味にほっとして、またがんばろうと思う。

 いつも「ちゃんと食べているの? 体は大丈夫?」と気遣ってくれる。自分もそんな母親になりたいとあこがれる。「そろそろ、本格的に天ぷら作りを習おうかな」(谷本陽子)

 はだ・みちこ 女優。1968年、茨城県生まれ。94年、映画「RAMPO」でヒロインを演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。テレビドラマへの出演も多数。NHKテレビ「生中継 ふるさと一番!」に出演中。

2006年2月21日  読売新聞)
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