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「草もち」 坂東真理子さん

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「草もちは、こしあんよりつぶあんが好き。手作り感があるでしょ」(東京都世田谷区の昭和女子大学で)=清水敏明撮影

母姉と作った故郷の味

   

 「品格」ブームの立役者の一人だ。礼状をこまめに書く、聞き上手になるなど、女性の振る舞いについて具体的にアドバイスした「女性の品格」は、170万部を超えるベストセラーに。「著書三十数冊目にして初めての経験。自分でもびっくり」と首をかしげて笑う。

 豊かな自然に恵まれた富山県立山町で生まれ育った。4人姉妹の末っ子。厳しい冬が過ぎ雪が解けるころ、姉たちとヨモギ摘みにでかけた。母と一緒に大好きな草もちをつくるためだ。

 かごを手に、田んぼのあぜに向かう。大きなヨモギは苦味が強いので、なるべく小さくて軟らかい新芽を探した。ふと顔をあげると、すぐそばに残雪をいただく立山連峰がそびえている。「その美しい景色のなかで、姉とヨモギを摘むのがとても楽しかった」

 家では母が小豆を煮て待っていた。かごいっぱいのヨモギを大きな鍋に入れる。強火でゆでると、すぐにクシャと小さくなってしまうのが不思議だった。姉たちと交代で、そのヨモギをすり鉢ですりつぶし、蒸したもちと練り合わせる。

 母の草もちは、特大サイズで、長さ10センチ、幅5センチくらいあった。つぶあんをもちの中に入れるのではなく、まぶして食べた。「ヨモギをたくさん使うから、もちは濃い緑色。豊かな風味と野の香りが口の中に広がった」

 ヨモギ摘みがさらに忙しくなったのは小学校5、6年生のころ。一回り年上の一番上の姉が結婚したからだ。出産や節句などお祝い事があると、草もちを重箱に詰めて、嫁ぎ先に持参するしきたりがあった。近所に配る分も含めて、50個、100個と作って運ぶ。お歳暮には出世魚のブリを届けた。

 「富山の女性は働き者で有名。実際の生活を支えていた。一方で、男尊女卑の風習も根強く残っていた」

 女性の強さと苦労を教えてくれた故郷を、18歳で離れた。東大を卒業し、女性キャリア官僚として霞が関での生活をスタートさせた。1978年には初の「婦人白書」の編集に携わる。女性政策を第一線で担当し続けながら、2人の子どもを育てあげ、母親の介護もした。

 そんな忙しい生活の中で、旧姓の「菅原真理子」の名前を使い、多くの女性を励ます本を年に一冊くらいのペースで書き続けてきた。今回ヒットした「女性の品格」は、いわばその集大成。「失敗も含めた自分の経験を、率直に自分の言葉で書いたことで、多くの女性の共感を得られたのかもしれませんね」と分析する。

 今年4月、地元の友人から、学長就任祝いとして草もちが送られてきた。春を告げるあの懐かしいヨモギの香りだった。口に含むと、立山連峰の凛(りん)とした姿が鮮明に目に浮かぶ。「品格」の原点となった景色である。(竹之内知宣)

 ばんどう・まりこ 昭和女子大学学長。1946年、富山県生まれ。69年に総理府(現・内閣府)入省。埼玉県副知事、女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベーン)などを経て、2001年内閣府の初代・男女共同参画局長。03年に退官し、昭和女子大学理事、今年4月から現職。

2007年10月9日  読売新聞)
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